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  『ロゼッタ』“Rosetta”  

 余分なものを全く撮し込まず、至近距離から手持ちのカメラで、ロゼッタの日常だけを記録する。
この監督ダルデンヌ兄弟の大胆なスタイルが、ロゼッタの“仕事探し”という生き残りをかけた闘いの切実さを、より赤裸々に浮き彫りにさせた。
 こうした緊張感溢れる画面と、効果的に取り入れられたロゼッタの呼吸や足音に引き込まれ、観る者はロゼッタのすぐ側でともに行動し、ともに困難に立ち向かうことになる。
 空瓶でつくった仕掛けで魚を釣り、林を抜ける時には隠してある長靴に履きかえ、おでこでゆで卵を割って食べる。厳しい生活の中にも楽しみを見いだすロゼッタ。映画が終わるころには誰もが彼女を理解し、いとおしく思うことだろう。

 作品の背景に、失業問題という現代社会の抱える深刻な問題を描きつつも、人間に対する大きな希望を含んだ『ロゼッタ』の内容と、映画表現の新たな可能性を極限まで突き詰めた、監督ダルデンヌ兄弟の大胆なスタイルが、大きな衝撃と興奮を巻き起こした。  主人公ロゼッタとして、映画初出演ながら堂々たる演技を見せ、主演女優賞を受賞したエミリー・ドゥケンヌ。彼女の「ロゼッタとして映画の中で生きよう」という決心と体当たりの演技が『ロゼッタ』に小さな奇跡を起こしてのダブル受賞となった。

 レオス・カラックス、ジム・ジャームッシュ、北野武、デイヴィット・リンチ、ペドロ・アルモドバルなど、ここ数年の中でも最も豪華な顔ぶれと作品が揃った1999年カンヌ国際映画祭。その中から最優秀賞であるパルムドールに選ばれたのが、ベルギー出身の兄弟、リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督の『ロゼッタ』である。