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ミハエルとダフナ夫妻のもとに、息子ヨナタンの戦死を軍の役人が知らせにやって来る。悲しみに打ちひしがれるふたり。そんな中、その報が誤りだったと分かる。安堵するダフナ。しかし、ミハエルは怒りをぶちまけ、息子を呼び戻すよう役人に要求する。前哨基地の検問所。ヨナタンは戦場でありながらどこか間延びした時間を過ごしている。ある日、若者たちが乗った車がやって来る。いつもの簡単な取り調べのはずが・・・。
愛する息子を連れ戻そうとする父、息子が生きていた事を喜ぶ母、戦場で悲しい体験をする息子。残酷な誤報が彼らの運命を翻弄してゆく。浮かび上がるそれぞれの愛、思い、優しさ、そして露わになるそれぞれの傷、罪、弱さ――。過去の、現在の行いの報いなのか? 彼らは、運命の渦に容赦なくのみ込まれてゆく。そして、その先にあるものは――深く大きな悲しみ、そしてかすかな愛の光。
監督自らの実体験をベースに、運命の不条理さ、人生のやるせなさを巧みな構成で描きだす。まるでギリシャ悲劇を思わせる緻密で独創的なストーリーが、スタイリッシュな映像、圧倒的で流れるようなカメラワークと相まって、ミステリアスに展開する。運命こそが最大のミステリー! 『運命は踊る』は観る者を釘づけにする。
監督・脚本を務めるのは、本作が長編2作目となるイスラエルのサミュエル・マオズ。自身の戦争体験を基に作り上げたデビュー作『レバノン』で、ヴェネチア国際映画祭グランプリ(金獅子賞)を受賞。華々しいデビューを飾る。新作を待つ声が高まる中、8年ぶりに本作『運命は踊る』を発表。イスラエルの社会状況を盛り込みながらも、誰もが共感できる普遍的な家族の物語を作り上げ、再びヴェネチア国際映画祭で審査員グランプリ(銀獅子賞)を受賞。2作連続で主要賞を受賞する快挙を成し遂げた。
その後も、各国の映画祭で数々の賞を受賞。本国でも、イスラエル・アカデミー賞であるオフィール賞で最多8部門受賞し、おしくもショートリストまでの選出となったが、アカデミー賞Ⓡ外国語映画賞のイスラエル代表に選ばれた。ナショナル・ボード・オブ・レビューでは、見事外国語映画賞を受賞。2018年、ヴァラエティ誌が毎年発表している観るべき10人の監督に、『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグらと共に選ばれた。世界的にも今、最も目が離せない監督のひとりである。
本国イスラエルでの公開の際に、スポーツ・文化大臣を中心とした右寄りの政治家から、「イスラエルにとって有害な映画。政府機関であるイスラエル映画基金から製作資金を与えられるべきでなかった」と攻撃を受けた『運命は踊る』。このことは、ヨーロッパ各国でも大きくメディアに取り上げられた。「この攻撃は、『運命は踊る』の物語がいかに正確なものかを証明している」と監督が語るように、このような攻撃があったにも関わらず、アカデミー賞Ⓡ外国語映画賞のイスラエル代表に選ばれ、イスラエル・アカデミー賞であるオフィール賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞を含む最多8部門を受賞するなど、本国でも圧倒的に支持されることとなった。
『運命は踊る』の原題でもあるフォックストロットは、1910年代はじめにアメリカで流行した、4分の4拍子、2分の2拍子の社交ダンス。作品の中で度々語られるフォックストロットのステップ。「前へ、前へ、右へ、ストップ。後ろ、後ろ、左へ、ストップ」――元の場所に戻って来る。どうあがいても、いくら動いても同じところへと帰って来る。動き出した運命は変えることができないということか…。
ミハエルとダフナ夫妻のもとに、軍の役人が、息子ヨナタンの戦死を知らせるためにやって来る。ショックのあまり気を失うダフナ。ミハエルは平静を装うも、役人の対応にいらだちをおぼえる。そんな中、戦死の報が誤りだったと分かる。安堵するダフナとは対照的に、ミハエルは怒りをぶちまけ、息子を呼び戻すよう要求する。ラクダが通る検問所。ヨナタンは仲間の兵士たちと戦場でありながらどこか間延びした時間を過ごしている。ある日、若者たちが乗った車がやって来る。いつもの簡単な取り調べのはずが…。
父、母、息子――遠く離れたふたつの場所で、3人の運命は交錯し、そしてすれ違う。まるでフォックストロットのステップのように。
1969年12月28日イスラエル、テルアビブ生まれ。1994年ベイト・ツヴィ演劇学校を卒業後、数多くの舞台に出演。その後、第54回カンヌ国際映画祭ある視点部門でプレミア上映され、オフィール賞を受賞したドベール・コサシュヴィリ監督の“Late Marriage”(01)で主演を務め、実力派俳優として国内外にその名を知らしめる。第64回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞、第84回アカデミー賞®外国語映画賞ノミネートとなった『フットノート』(11/ヨセフ・シダー監督)、リチャード・ギアと共演した『Norman: The Moderate Rise and Tragic Fall of a New York Fixer』(原題)(16/ヨセフ・シダー監督)などに出演、高い演技力が評価される。
その他に、第54回ベルリン国際映画祭パノラマ部門のオープニング作品“Walk on Water”(04/エイタン・フォックス監督)、アメリカをはじめ各国でリメイク版が製作されるほどの人気を博したTVシリーズ「In Treatment」などに出演。『運命は踊る』では、オフィール賞で主演男優賞に輝いた。
1978年6月18日フランス、パリ生まれのイスラエル人。“Afraid of Everything”(91/デイヴィッド・バーカー監督)でスクリーンデビュー。以降アメリカ、フランス、イスラエルと拠点を移しながら活動を続ける。
主な出演作に、第51回カンヌ国際映画祭France Culture Award受賞“Avanim”(04/ラファエル・ナジャリ監督)、第17回ヨーロッパ映画賞主演女優賞にノミネートされた『アワーミュージック』(04/ジャン=リュック・ゴダール監督)、『マリー・アントワネット』(06/ソフィア・コッポラ監督)、オフィール賞主演女優賞を受賞し、第60回カンヌ国際映画祭カメラドールにも輝いた『ジェリーフィッシュ』(07/エドガー・ケレット&ジェリー・ゲフェン監督)がある。その他、アモス・ギタイ監督の「アナ・アラビア」(13)、「ツィリ」(14)など。
1960年イスラエル生まれ。1993年より映像業界で活動、TV、CM、映画など数多くの作品に携わる。
“Out of Sight”(05/ダニエル・シルキン監督)でオフィール賞撮影賞を受賞する。サミュエル・マオズ監督『レバノン』(09)で撮影監督を務め、第23回ヨーロッパ映画賞撮影賞(カルロ・ディ・パルマ賞)受賞、撮影部門に特化した国際映画祭Camerimageで最高賞受賞、オフィール賞撮影賞受賞など国際的に高い評価を受ける。そのほか『オオカミは嘘をつく』(13/アハロン・ケシャレス&ナヴォット・パプシャド監督)など。サミュエル・マオズ監督と8年ぶりのタッグとなる『運命は踊る』では、オフィール賞撮影賞に再び輝いた。
1962年5月23日イスラエル、テルアビブ生まれ。幼い頃から映画に関心を持ち、13歳の頃8ミリカメラとフィルム一巻を買ってもらう。西部劇で見た決闘場面を再現しようとして、近づいてくる列車の線路上にカメラを設置し、粉々にさせた。18歳の頃には、何十本もの自主映画を撮るようになる。
その後、イスラエル軍の戦車部隊に配属され砲手として訓練を受ける。1982年6月、イスラエルはレバノンに侵攻。20歳になったばかりのマオズは、勃発したレバノン戦争に砲手として従軍し、壮絶な戦争体験をする。その後、撤退にともない帰国。ベイト・ツヴィ演劇学校でかねてより関心を持っていた映画を学び、1987年に卒業する。翌年、自身の戦争体験を基にした脚本の執筆を試みるも、当時の生々しい記憶や匂いまでもが甦り書き進めることができず一時中断。カメラマンやプロダクションデザイナーとして映像作品に携わり経験を重ねる。そして、構想から約20年を経た2009年、レバノンでの戦争体験を基にした長編映画デビュー作『レバノン』を発表。戦車のスコープを通して映し出される緊迫感とリアリティに溢れた映像は各国の映画祭で絶賛され、第66回ヴェネチア国際映画祭でグランプリ(金獅子賞)受賞、第23回ヨーロッパ映画賞 ディスカバリー賞(初監督作品賞)など数々の賞を受賞する。監督・脚本を手掛けた8年ぶり2作目の長編『運命は踊る』(17)では、第74回ヴェネチア国際映画祭で審査員グランプリ(銀獅子賞)を受賞、第23回アテネ国際映画祭監督賞受賞のほか、第31回オフィール賞(イスラエル・アカデミー賞)作品賞、監督賞、主演男優賞を含む最多8部門受賞、第90回アカデミー賞®外国語映画賞イスラエル代表に選ばれるなど国内外で高い評価を得ている。
1999年
「The King Lives」(TVドラマ)
2000年
“Total Eclipse”(ドキュメンタリー)
2005年
「The Insufferable Lightness」(TVドキュメンタリー)
2009年
『レバノン』
2013年
“Manybuy”(短編)
2017年
『運命は踊る』
映画は息子の訃報で始まりますね。この物語の基は何でしょう。
私自身に起こった出来事を基にしています。長女が高校に通っていた頃、彼女は朝早く起きられたためしがなく、遅刻しないようタクシーを呼んでくれというのです。お金もかかりますし、教育上悪いとも思えたので、ある朝私は頭にきて、みんなと同じようにバスを使えと命じました。言い争いはありましたが、時間通りに起きることを彼女は学ぶ必要があったのです。バスは5番線でした。彼女が家を出て30分後、テロリストが5番線で爆弾を爆破させ、何十人もの人が殺されたとニュースサイトで知りました。娘に電話しましたが、当然のことながらつながりませんでした。人生で最悪の時間を過ごすことになりました。私自身の戦争の時期をすべて合わせたよりもひどい時間でした。1時間後、娘は家に帰ってきました。爆破されたバスに乗り遅れていたのです。
『運命は踊る』はギリシャ悲劇としても見ることができます。三部構成であるということだけでなく、信仰、自由意志、人間の思い上がりといった比喩的表現をギリシャ悲劇から借り受けているように思います。このアイデアはどこから生まれたのでしょう。
ギリシャ悲劇の三部構成は、私のアイデアを伝えるのに最適な形式だと思えました。ミハエルは自ら罰を引き寄せ、自分を救おうとする者たちと敵対します。彼は、自分の行動がもたらす結果にまったく気づいていないのです。それどころか、彼は正しく、また当然と思える行動をとる。単なる偶然と、運命の仕業に見える偶然との違いがそこにあります。一見混沌に見えるものは、すべて定められたものなのです。罰は極めて正確に罪に見合っている。因果応報、なるべくしてなる。そして、そこには運命につきものの皮肉も感じられます。ミハエルは、息子を救えるという思い上がりゆえに、罰せられるのです。
同時に、三部構成にしたことで、観客に感情の旅を提供することができました。第一部でショックを与え、第二部で幻惑させ、第三部で感動を与える。それぞれの場面は、映画的な技法を駆使することで、その中心を担う登場人物の性格を反映したものになっています。ミハエルを中心とする第一部は、彼自身のように鋭く、冷たく、簡潔です。突き放した構図からなっています。第三部は母親、ダフナにより密接に結びついている。青みを用い、柔らかく、温かみがある。真ん中のヨナタンのシークエンスは、夢に捕われた芸術家の内面世界のように、地面から数センチ浮き上がっています。映画全体が哲学的パズルなのです。
『レバノン』がヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞してから、『運命は踊る』が作られるまで8年もかかったのはなぜでしょう。
かかったのは3年です。というのも他のこともしていますから。私は本を書き、絵を描き、子育てと、常にひとつ以上のことをしています。映画だけ作っている訳ではありませんので。
1個1個が念入りに、驚くほど効率的に作られたピースからなる複雑なパズルのようだ。それぞれのアングル、トラヴェリングの動き、フレーミング、色層を計算しつくしたカメラ、繊細なスコア、ギリギリまで切り詰められた台詞が最大の衝撃を観る者に与える。
     スクリーン・インターナショナル
魔術的なリアリズム、巧みなショット、心に残るイメージ。そのテクニックはめざましく、感情に深く訴えかけてくる。
     ロサンゼルス・タイムス
登場人物たちは運命とフォックストロットを踊っている。何をしようが、ステップを踏めば元のところに戻ってきてしまうのだ。このビザールな感覚。痛ましさの極限までいきついた大胆なモダン・シネマ。
     ハリウッド・レポーター
『運命は踊る』の不敵さは最大限の賞賛にふさわしい。大胆なヴィジュアルによって見事に作り込まれた画面が、物語に深みを増す。恐れ知らずの、賞に値する映画。
     バラエティ
風刺映画が常にそうであるように、そのユーモアは苦い。しかし描かれる感情は温かく、真実味に満ちている。
     ハフィントン・ポスト
2017年最良の映画のひとつ。今目の前に見えているものが、真正な映画作家によるものと確信させてくれる稀な映画。政治的な意見の表明が、現実にしっかり根付いている。
     スラッシュ・フィルム
悲しみを見つめる眼差し。この映画は時に美しく、時におかしい。しかし、何より強く感じられるのは深い悲しみだ。『運命は踊る』が見つめるのは喪の作業なのだ。
     ヴァニティ・フェア
大胆にして不敵な映画。スタイルが高度に洗練されていると同時に想像力も豊かである。主題の感情的な深さにもかかわらず、ユーモアに満ち、一級品のエンターテインメントにもなっている。
     シネヴュー
見事な演技の素晴らしい映画。真の傑作!
     ジューイッシュ・スタンダード
喪に服す両親、人間の犯す過ち、いかなる権力につきものの腐敗。イスラエル文化に基づく部分もあるものの、物語は普遍的だ。ひとつひとつのショットがやさしさと、自信、ユーモア、視覚的ひらめきに満ちている。
     タイム・オブ・イスラエル
ありえない状況、感情の鋭い対比、生きるか死ぬかがかかった瞬間の美しさ。観る者は驚き、厳粛な感情に目覚め、また同時に、戦争地帯で、無駄に費やされる若さの不条理を本能的に感じるだろう。大胆で正確なマオズ監督の選択は、それぞれの場面を機能させるばかりでなく、映画全体を、単なる悲しみや怒りを超えたもっと豊かな何か、思慮に満ち、美しく、圧倒的な何かに変える。
     フィルム・ステージ
何世代にも渡って残り続ける映画。我々の時代の最良の映画監督による、非の打ちどころのない最上級の作品だ。
     バース・ムーヴィーズ・デス
この映画は観終わった後、何日も、何週間も、何カ月も心に取りついて離れない。それは、『運命は踊る』が並外れた映画だからだ。
     ファースト・ショーイング