前作『さよなら、人類』でヴェネチア国際映画祭の金獅子賞(グランプリ)に輝き、さらに5年ぶりに発表した本作でも同映画祭で最優秀監督賞受賞という快挙を果たしたスウェーデンの巨匠ロイ・アンダーソン。CG全盛の時代にCGはほぼ使わず、野外撮影ではなく巨大なスタジオにセットを組み、模型や手描きのマットペイント(背景画)を多用するというアナログにこだわった手法で驚きの傑作を生みだしてきた。絵画のような映像美と、独特のユーモアが散りばめられた哲学的な世界観が絶賛され、これまで『散歩する惑星』(00)、『愛おしき隣人』(07)、『さよなら、人類』(14)と世界中の映画祭で受賞を重ねてきた。『ミッドサマー』アリ・アスター、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』アレハンドロ・G・イニャリトゥ、『ブラック・スワン』ダーレン・アロノフスキーなど、名だたる映画監督たちも敬愛する監督にロイの名を挙げ、映画ファンのみならず名匠たちをも熱狂させている。
“映像の魔術師”ロイ・アンダーソン監督が本作で描くのは、時代も年齢も異なる人々が織りなす悲喜劇。構図・色彩・美術と細部まで計算し尽くし、全33シーンすべてをワンシーンワンカットで撮影した。実在の名画の数々からインスパイアされた美術品のような贅沢な映像にのせて「千夜一夜物語」(アラビアンナイト)の語り手を彷彿とさせるナレーションが物語へと誘う。さらに、ビリー・ホリデイ、ザ・デルタ・リズム・ボーイズなど時代を超えて愛される歌声も登場。映画に彩りを与え、ロマンティックな雰囲気を纏わせる。
この世に絶望し、信じるものを失った牧師。戦禍に見舞われた街を上空から眺めるカップル…悲しみは永遠のように感じられるが、長くは続かない。これから愛に出会う青年。陽気な音楽にあわせて踊るティーンエイジャー…幸せはほんの一瞬でも、永遠に心に残り続ける―。人類には愛がある、希望がある。だから、悲劇に負けずに生きていける。悲しみと喜びを繰り返してきた不器用で愛おしい人類の姿を万華鏡のように映したアンダーソン監督渾身の傑作が、遂に日本に上陸する!
一度の人生を、毎日何かをしながら生きていて、できない日も沢山あって。
不完全な毎日がひどく残念な気もするが、また明日も懲りずに生きている。
彼らのように繊細に普通に暮らしたい。誰かに見られて生きているんじゃないのだから。
Noritake
(イラストレーター)
長尾謙一郎
(漫画家)
いいなぁ。素敵だなぁ。こんな漫画が描ければ幸せだろうなぁ。
すべてがシンプルで正夢のような映画でした。
和田ラヂヲ
(漫画家)
大橋裕之
(漫画家)
最上直彦
(デザイナー)
大嶋奈都子
(イラストレーター)
ロイ・アンダーソンは「静止画に挑んだ映像作家」だ。
まさに美術館で見る芸術に近く、「永遠性」のようなものを感じる。
「負の遺産」を美しさと一緒に未来へとバトンをつなぐ——
この映画は、もしかしたら100年後に届くかもしれない。
斎藤工
(俳優/映画監督)
我々が普段SNSで目にしている日常の前後に起きているであろう、いわば「のりしろ」の部分が淡々と続く76分に、
むしろそんな「のりしろ」こそが人生であり、人間らしさであり、眩しく美しいものだと気づかせてくれる、鳥たちの群れ。
ふかわりょう
(タレント)
よく分からないけど笑っちゃう。
"分かりやすい"="正義"ではない!
この滞空時間を映画館で体験して欲しい。
片桐仁
(俳優・彫刻家)
ロイ・アンダーソンの画面では、あらゆるものに等しく居場所が与えられる。
雲に覆われた暗い空、くすんだ街、淡い光に包まれた室内、さえない人物。
要らないものは何もない。それを見つめる私たちの妄想も含めて。
小野正嗣
(作家)
なにかを失った人、絶望した人……、彼らはすぐそばにいる誰か、そしてわたしたちなのかもしれない。
哀しくて奇妙なのに、すべてが愛おしくなる不思議な映画。
柴崎友香
(小説家)
分厚い画集のページを一枚一枚丁寧にめくるように広がっていく映像世界。
曇り空のような灰色で描かれた悲劇の画たちは、
時に希望で色づいているかのように美しく見えた。
吉田ユニ
(アートディレクター)
人間の駄目な部分が表現されていて
まるで落語を聴いているかのような映画でした。。
加賀美健
(現代美術作家)
やっぱり彼は、地球調査にやってきた宇宙人なんじゃないだろうか!?
ロイ・アンダーソンの目から見た地球人たちは、哀しくてどこかおかしい。
個人的には、信仰をなくした牧師のこれからが心配です!
福里真一
(CMプランナー)
全てのシーンがまるでミニチュアの世界を覗いているような不思議な感覚。
世界観の作り込みと美しさに感服しました。
田中達也
(ミニチュア写真家/見立て作家)
寂しくて哀しいとき、何度も読み返せるよう手元に置いておきたくなる、まるで絵本のような映画。
私たちの瞳から零れる水は、やさしく、つめたく、心地よいと信じたくなる。
枝優花
(映画監督)
坂本九の「明日があるさ」を思い出した。
一歩踏み出せずに、幸せが訪れない人々を通して、
「でも、僕たちは今を生きてて、明日がある」と気づかせてくれるのだ。
奥山大史
(映画監督)
1カット目が永遠に続いてもいいと思った。ラストカットが永遠に続いてくれと思った。
ああ!あのシーンと同じ鳥が飛んでいる!最高!
長久允
(映画監督)
とても美しい!そして面白くて悲しい...劇場でお金を払って観る価値がある作品だ。
エドガー・ライト
(映画監督/『ベイビー・ドライバー』)
集大成のようでいて、若き日の熱い思いもあふれるような傑作。
ロイ・アンダーソンのように世界を捉えられたら。
監督の視線が、音楽が、胸にしみる…!
森百合子
(北欧ジャーナリスト)
人生ってほとんど地味な瞬間の積み重ねだと思っています。
でも、その地味な瞬間を切り取ると、嬉しかったり、物悲しかったり、
ものすごく悲劇的だったりその逆だったりと、それぞれに表情があります。
人生は地味だけどドラマチックなものなんだな、と再確認できる作品でした。
星野概念
(精神科医など)
まるで完璧なタブローのような、ジオラマのような人工的な風景をバックに人が動き出す時、
そこからこぼれてくるのは人生の不条理、哀愁、侘しさ。
でもそれが不思議とコミカルで、何だか愛おしい。
山崎まどか
(コラムニスト)
悩んだり、トラブルに見舞われたり、つかの間の幸せに浸ったり……
人間の移ろいゆく姿が神の視点で変換されたかのように愛おしいです。
観る側もいつの間にか俯瞰して神目線に……。
達観するためには人間を「ホモ・サピエンス」と呼ぶことからはじめたいです。
辛酸なめ子
(漫画家/コラムニスト)
嘆きに寄り添い脆さを受け止めるうちに、不思議なおかしみに包まれ肩の力が抜けた。
感情をドラマチックに演出しなくても、ありのままの姿で私たちは充分ユニークなのだ。
奥浜レイラ
(映画/音楽パーソナリティ)
たった1秒で目と心が支配され、76分畏敬の念が止まらない。
映し出される“画”の圧倒的存在感。今日、僕は、神の御業を見てしまった。
SYO
(映画ライター)
すべてのシーンが絵になっていて、バラエティ豊かなスケッチブックをめくるように最後まで飽きさせない。
こんな映画、他にない。
米谷一志
(芸術新潮編集部)