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川の向こうは、とてもコワイ。らしい。
町境である一本の川を挟んで〝朝9時から夕方5時まで″規則正しく戦争をしている二つの町。
川の向こうの町をよく知るひとはいない。だけど、とてもコワイらしい。津平町に暮らす真面目な兵隊・露木がある日突然言い渡されたのは、音楽隊への人事異動?!そんな中、偶然向こう岸から聞こえる音楽と出会い、その音色に心を惹かれていく…。一方、町ではある噂が広がっていて——。
川の向こうには何があるのだろう?〝わからないもの″を恐れる人々の一風変わった暮らしの中は、戦争・権力・男女・身体…どこにでもある、人類の絶えない悩みで溢れている。いつの時代でもない架空の町の小さな社会と、わたしたちの日常が地続きにあることを映し出す。数々の話題作を抑え、第21回東京フィルメックスで日本人監督作品としては初となる審査員特別賞に輝いた。
夢のようでいて、リアリスティック。
世界が認める新たな才能、全開!
長編 第2作『山守クリップ工場の辺り』(13)がロッテルダム国際映画祭、バンクーバー国際映画祭でグランプリ、ぴあフィルムフェスティバルで審査員特別賞を受賞。続く『うろんなところ』(17)は東京国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭のほか多くの国際映画祭で上映され、その斬新なアイデアとオリジナリティーで世界から注目を浴びる池田暁監督。初の劇場公開である本作でも、アキ・カウリスマキ、ロイ・アンダーソンを彷彿とさせるオフビートな笑いや、テリー・ギリアムを思わせる独自の世界観が混ざり合う、異色の才能は全開!
目的を忘れ、全く知らない相手と毎日戦争をしている町を舞台に、そんな日々をなんの疑問もなくやりすごす一人の兵隊と、周囲の人々の暮らしが変化していく様を淡々と、ユーモアたっぷりに描き上げた。
池田ワールドを色濃く彩る、個性派キャストが大集結!
主演を務めるのは、『あゝ、荒野』(17)、『シグナル100』(20)、『とんかつDJアゲ太郎』(20)など、映画・ドラマ・舞台と活躍の場を広げる前原滉。映画初主演ながら、感情の読めない表情や口調から浮かび上がる、からくり人形のようなキャラクターを見事に演じ切った。さらには石橋蓮司や竹中直人のほか、橋本マナミ、矢部太郎、嶋田久作、片桐はいり、きたろう等、豪華な顔ぶれが勢揃い。実力確かな個性派俳優たちが、唯一無二の作品世界に彩りを加える。
一本の川を挟んで「朝9時から夕方5時まで」規則正しく戦争をしている二つの町。津平町に暮らす露木は、真面目な兵隊だ。朝から川岸に出勤し、お昼は気まぐれなおばさんの定食屋。夕方になれば、物知りなおじさんの煮物を買って帰って、眠るだけ。川の向こうの太原町をよく知るひとはいない。だけど、とてもコワイらしい。
ある日突然、露木が言い渡されたのは、音楽隊への人事異動?! 家で埃を被ったトランペットを引っ張り出したはいいものの、明日からどこへ出勤すればいいのやら…。
そんな中、ひょんなことから出会ったのは向こう岸から聞こえる音楽だった。
その音色に少しずつ心を惹かれていく一方、町では「新部隊と新兵器がやってくる」噂が広がっていて     
前原滉
まえはら・こう
津平町の真面目な兵隊・露木
1992年11月20日生まれ、宮城県出身。連続テレビ小説「まんぷく」(18/NHK)、大河ドラマ「おんな城主 直虎」(17/NHK)、「いだてん~東京オリムピック噺~」(19/NHK)などの話題作をはじめ、近年ではドラマ「陸王」(17/TBS)、「隣の家族は青く見える」(18/CX)、「あなたの番です」(19/NTV)、「私たちはどうかしている」(20/NTV)、「バベル九朔」(20/NTV)、映画『あゝ、荒野』(17/岸善幸監督)、『栞』(18/榊原有佑監督)、『うちの執事が言うことには』(19/久万真路監督)、『JKエレジー』(19/松上元太監督)、『シグナル100』(20/竹葉リサ監督)、『とんかつDJアゲ太郎』(20/二宮健監督)など、活躍の幅を広げている。初主演映画となる本作では、ドライにさえ見える真面目な兵隊・露木の心の機微を丁寧に表現し、からくり人形のようなキャラクターを見事に演じ切った。
今野浩喜
こんの・ひろき
夢は昇進。露木の同僚・藤間
1978年12月12日生まれ、埼玉県出身。スクールJCA6期生。元お笑い芸人として活躍。コンビ解散後は俳優として数多くのテレビドラマや舞台に出演。映画『くそガキの告白』(12/鈴木太一監督)で、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2012ベストアクター賞・ファンタランド大賞(人物部門)をダブル受賞。近年の主な出演作に大河ドラマ「真田丸」(16/NHK)、「僕たちがやりました」(17/CX)、「テセウスの船」(20/TBS)、「竜の道 二つの顔の復讐者」(20/KTV)、「極主夫道」(20/NTV)、映画『不能犯』(17/白石晃士監督)、『今夜、ロマンス劇場で』(18/武内英樹監督)などがある。
中島広稀
なかじま・ひろき
前職は泥棒?新入り兵隊・三戸
1994年3月28日生まれ、群馬県出身。2010年に『告白』(中島哲也監督)で映画デビュー、16年には『土佐の一本釣り〜久礼発 17歳の旅立ち〜』(蔵方政俊監督)で初主演を務めた。主な出演作に、映画『スープ~生まれ変わりの物語~』(12/大塚祐吉監督)、『悪の教典』(12/三池崇史監督)、『渇き。』(14/中島哲也監督)、『キスできる餃子』(18/秦建日子監督)、『高崎グラフィティ。』(18/川島直人監督)、『レディ in ホワイト』(18/大塚祐吉監督)、短編映画『Bon Voyage ボン・ボヤージ SMAの勇者ここに誕生』(19/三ツ橋勇二監督)がある。また、2021年2月に公開の映画『モルエラニの霧の中』(坪川拓史監督)に出演。ドラマでは連続テレビ小説「べっぴんさん」(16/NHK)、「イノセンス 冤罪弁護士」(19/NTV)など。映画、ドラマ、舞台、CMと数多くの作品に出演している。
清水尚弥
しみず・なおや
町長自慢のマイペースな息子・平一
1995年4月6日生まれ、東京都出身。映画『死んだ目をした少年』(15/加納隼監督)、『ある女工記』(18/児玉公広監督)で主演を務め、そのほか映画では『ソ満国15歳の夏』(15/松島哲也監督)、『人狼ゲーム プリズン・ブレイク』(16/綾部真弥監督)、『ちはやふる引上の句引』(16/小泉徳宏監督)、『ANTIPORNO』(17/園子温監督)、『森のかたみ』(18/大杉拓真監督)、舞台では「惡の華」(16/演出:加藤拓也)に出演するなど、映画、ドラマ、舞台、CM、MVなど様々な作品に出演している。
橋本マナミ
はしもと・まなみ
上司の献身的な妻・春子
1984年8月8日生まれ、山形県出身。グラビアアイドルとして人気を博す一方で、映画、ドラマ、CMなど女優としても幅広く活動。16年、『全員、片思い/イブの贈り物』(伊藤秀裕監督)では横浜流星と共に主演を務める。近年の主な出演作に大河ドラマ「真田丸」(16/NHK)、連続テレビ小説「まんぷく」(18/NHK)、映画『光』(17/大森立嗣監督)、『セカイイチオイシイ水〜マロンパテイの涙〜』(19/目黒啓太監督)、『地獄少女』(19/白石晃士監督)、『癒しのこころみ~自分を好きになる方法~』(20/篠原哲雄監督)など。公開待機作に映画『燈火 風の盆』(坂下正尚監督)がある。
矢部太郎
やべ・たろう
どこか頼りない技術者・仁科
1977年6月30日生まれ、東京都出身。97年にお笑いコンビ「カラテカ」を結成。お笑い芸人としてだけでなく、映画やドラマ、舞台など俳優としても活躍。主な出演作は映画『獣道』(17/内田英治監督)、『蟲毒 ミートボールマシン』(17/西村喜廣監督)、『美人が婚活してみたら』(19/大九明子監督)、『ラストレター』(20/岩井俊二監督)、Netflixオリジナルドラマ「全裸監督」(19)など。漫画家デビュー作「大家さんと僕」(17)では、第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。お笑い芸人として初受賞という快挙を成し遂げ、20年3月にNHKにてアニメ化作品も放映された。
片桐はいり
かたぎり・はいり
気まぐれな定食屋店主・城子
1963年1月18日生まれ、東京都出身。大学在学中に「もぎり」をしながら俳優活動を開始。『コミック雑誌なんかいらない!』(86/滝田洋二郎監督)で映画デビュー。舞台を中心に、映画、ドラマなどで幅広く活躍中。近年の主な出演作に『かもめ食堂』(06/荻上直子監督)、『小野寺の弟・小野寺の姉』(14/西田征史監督)、『シン・ゴジラ』(16/樋口真嗣監督)、『勝手にふるえてろ』(17/大九明子監督)、『蜜蜂と遠雷』(19/石川慶監督)、『私をくいとめて』(20/大九明子監督)など。キネカ大森先付ショートムービー『もぎりさん』シリーズ(18、19)では主演を務める。著書に、エッセイ『もぎりよ今夜も有難う』などがある。
嶋田久作
しまだ・きゅうさく
物知りな煮物屋店主・板橋
1955年4月24日生まれ、神奈川県出身。映画『帝都物語』(88/実相寺昭雄監督)加藤保憲役で映画デビューを果たし、強烈な存在感を放つ。以降、映画、TVドラマ、CMと幅広く活躍。近年の主な出演作に、映画『キツツキと雨』(12/沖田修一監督)、『星ガ丘ワンダーランド』(16/柳沢翔監督)、『孤狼の血』(18/白石和彌監督)、『一度死んでみた』(20/浜崎慎治監督)、『生きちゃった』(20/石井裕也監督)、ドラマ「おかしの家」(15/TBS)、「撃てない警官」(16/WOWOW)、連続テレビ小説「半分、青い」(18/NHK)、「連続殺人鬼カエル男」(20/KTV)など。
きたろう
 
27代目指揮者兼、自称楽隊の頭脳・伊達
1948年8月25日生まれ、千葉県出身。劇団俳優座小劇場(俳小)を退団後、79年にコントグループ「シティボーイズ」を結成。近年の主な映画出演作に『殿、利息でござる!』(16/中村義洋監督)、『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』(17/河合勇人監督)、『忍びの国』(17/中村義洋監督)、『モリのいる場所』(18/沖田修一監督)、『体操しようよ』(18/菊地健雄監督)、『ロマンスドール』(20/タナダユキ監督)、『水曜日が消えた』(20/吉野耕平監督)など。池田暁監督作品には、短編『化け物と女』(18)に続く出演。
竹中直人
たけなか・なおと
優秀なトランペット奏者・大木
1956年3月20日生まれ、神奈川県出身。俳優、コメディアン、映画監督、歌手と各方面で多才ぶりを発揮。『シコふんじゃった。』(92/周防正行監督)、『EAST MEETS WEST』(95/岡本喜八監督)、『Shall we ダンス?』(96/周防正行監督)で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を3度受賞。91年には、主演も務めた初監督作『無能の人』が第48回ヴェネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞、第34回ブルーリボン賞主演男優賞を受賞したほか、監督作・出演作で受賞多数。監督作品は『119』(94)、『東京日和』(97)、『サヨナラCOLOR』(05)、など7本に及ぶ。近年の出演作に、『麻雀放浪記2020』(19/白石和彌監督)、『カツベン!』(19/周防正行監督)など。21年に自身8作目となる監督作品『ゾッキ』(山田孝之、齊藤工と共同監督)が公開予定。
石橋蓮司
いしばし・れんじ
肝心なことばかり忘れてしまう津平町長・夏目
1941年8月9日生まれ、東京都出身。劇団「第七病棟」主宰。映画、ドラマ、ナレーションなど、幅広く活躍。『浪人街』(90/黒木和雄監督)、『われに撃つ用意あり』(90/若松孝二監督)で、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、報知映画賞助演男優賞、毎日映画コンクール助演男優賞、キネマ旬報助演男優賞を受賞。『今度は愛妻家』(09/行定勲監督)、『アウトレイジ』(10/北野武監督)等で、日本アカデミー賞優秀助演男優賞、ブルーリボン賞助演男優賞などを受賞。近年の出演作は、主演映画『一度も撃ってません』(20/阪本順治監督)のほか、『孤狼の血』(18/白石和彌監督)、『キングダム』(19/佐藤信介監督)、『半世界』(19/阪本順治監督)、『犬鳴村』(20/清水崇監督)など多数。
池田暁
いけだ・あきら
1976年1月11日生まれ、東京都出身。日活芸術学院美術コース在学中に、鈴木清順作品を手がけたことでも知られる木村威夫美術監督と出会い、薫陶を受ける。初の長編映画『青い猿』(07)が、第29回ぴあフィルムフェスティバルにて観客賞を受賞。その後、クリップを手作業で生産する工場で働く男の淡々とした日々が見知らぬ人々との出会いを経て変化していく様を描いた『山守クリップ工場の辺り』(13)で、第43回ロッテルダム国際映画祭、第32回バンクーバー国際映画祭でグランプリ、第35回ぴあフィルムフェスティバルにて審査員特別賞を受賞。各国の映画祭で上映され、注目を浴びる。続く『うろんなところ』(17)は、第30回東京国際映画祭、第47回ロッテルダム国際映画祭、第20回台北映画祭、第35回エルサレム映画祭などで上映される。2018年にはndjc 2017で短編映画「化け物と女」を35mmフィルム撮影で製作。本作は長編4作目となる。
微笑でも苦笑でも哄笑でもない無音の笑いが途切れない。
意味に囚われない人間存在の面白さ。
谷川俊太郎
詩人
善も悪も、すべてが美しかった。言葉と景色に魅了された。
この戦争は俺らの心のなかにある。
この映画を観てよかった。
町田康
小説家
吉田戦車
漫画家
ここにある笑いは、おこがましいが別役実や私が書く作品の質にも似ているが、
きわめて映画的に美しく描かれるとき、それは小津安二郎にも見える。
けれど、というか、だからこそ、きわめて不気味な人間たちの住む世界のグロテスクな笑いになる。
新しい毒をもった喜劇だ。
宮沢章夫
劇作家・演出家・作家
空前絶後、監督独自の世界が映画を埋め尽くしている。
ああ、この映画をカウリスマキに観せたい。
テリー・ギリアムに観せたい。
根岸吉太郎
映画監督


一見奇妙で、趣味的な映像に見えるかもしれない。
だが次第にこれは
多くの日本人にとって「よく見た風景」であることに気付くでしょう。
ドリヤス工場
漫画家
テッテ的な反戦映画誕生。
おかしな世界をツッコミモードで観ている内にジワジワと現実世界の今とシンクロしていることに気づきゾッとする。そんな稀有で効果的な反戦映画。
倉本美津留
お笑い作家
融通がきかない不器用な人々への慈愛の情が芽生え、
繰り返される会話や音楽が次第に病みつきに……。
この世界観が不思議と心地よいのは
日本人に多いまじめなA型だからでしょうか。
辛酸なめ子
漫画家・コラムニスト


ユーモアのわからない人間が戦争を始めるという言葉がある。
ユーモアなき世界をユーモアたっぷりに描いたこの作品は、
つまり今こそ必要だ。
信濃八太郎
イラストレーター
世界観に戸惑いながらいつしか癖になっている。
現代日本に生きている私たちにとって、
押されると痛いツボが映画の隅々にひそんでいる。
井上荒野
小説家
静かに過激によく作り込んでるなと感心しました。
日本にはまだまだ面白い顔の俳優さんがいっぱいいるということも気づかされました。
ぼんやりしている今の自分にチクチク刺さる映画でした。
山下敦弘
映画監督
落語で例えるなら、四代目春風亭柳好師匠の【道具屋】。
背筋が凍るほどの才能。
得体の知れない面白さ。
瀧川鯉八
落語家
僕は子供の頃から映画が大好きだった
撮影現場で働く人たちを想像したり
編集作業を考えると映画はもっと楽しくなった
この作品の現場は盛り上がったに違いない
出来上がった作品には スタッフの笑顔が隠れている
見終わると 毎日の自分の暮らしがふと不安になる
そして 歩き方もおかしくなる
久米宏
今の日本映画のエアポケットに、いきなり凄いものが飛んできた!
知らない場所や人間のリアルを想像すること。
自分の頭と心で考えること。
この映画は全世界に必要な一本だ。
森直人
映画評論家
池田暁の作品は現代の日本映画の中でもユニークで、とてもスペシャルだ。
科学的ともいえる精密さで、
たどたどしいトランペットの音色の中に、笑いと痛みの中間点を見つけ出す。
トニー・レインズ
映画評論家
人々が目的も知らずにルールを守る世界において、社会を風刺するなら戦争を舞台にするのが最適だ。
ポーカーフェイスで放たれるユーモアが、ドキュメンタリーよりも真実味を感じさせる。
ジュリアン・ロス
ロッテルダム国際映画祭プログラマー
池田暁は、鋭い感性でもって
現実とはかけ離れながらも、
どこか親近感がある日本の姿を描き出す。
SCREENDAILY
無表情の主人公・色味を抑えた静かな画面・言葉遊び…
池田暁の作品は
アキ・カウリスマキやデヴィッド・リンチのような、
偉大な映画作家たちの作品を彷彿とさせる。
The Hollywood Reporter
*敬称略・順不同