年間自殺者が3万4千人を超える“自殺大国ニッポン”。不安定な現代社会において、自殺は近年増加の一途を辿っている。集団自殺などと、その形態が多様化してきている昨今でさえも、富士山麓に広がる“青木ヶ原樹海”に足を踏み入れる人の数は減ることがない。その“樹海”を舞台に、本作『樹の海』は4つのエピソードで展開される。
様々な理由でこの森に迷い込んだ人々、死を望んだ者、或いは生を渇望する者、それぞれが抱える人生の断片が交錯しながら物語は綴られていく。自殺を決意して樹海の奥へと足を踏み入れたものの、助けを求める者、助けに向かう者、自殺の真相を追う者。自殺に失敗して還ってきた者。樹海に捨てられた者。自殺を目撃してしまった者、自殺者と関わりのあった者。本作は“生と死”をテーマとした異色の群像劇でありながら、「自殺」という題材を「生きよう」という願いの基に正面から描いた人間ドラマでもある。
樹海に捨てられる男に萩原聖人、日常生活をキチンと営みながらも空洞を抱える女に井川遥、樹海まで女を捜しに行く男に池内博之、新橋の雑踏の中で生死を見つめなおす男たちに津田寛治と塩見三省。
さらに、余貴美子、大杉漣などベテラン・実力派、小嶺麗奈、小山田サユリ、中村麻美といった若手・個性派がしっかりと脇を固めている点も見逃せない。
監督は降旗康男監督、佐々部清監督をはじめ、多くの名監督の助監督を経て今作品で念願の監督デビューを果たす瀧本智行。豊富な経験に裏打ちされた実力を十二分に発揮し、樹海での自殺という重い題材を「生きる希望」へと導くことに成功、デビュー作とは思えない完成度の高い作品に仕上げた。
また、AMADORIが歌う’69年のヒット曲「遠い世界に」がラストを静かに、そして余韻深く締めくくる点も必聴だ。
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