Story
昨日までの自分を失ったら、
何を演じたら良いのだろう。
宮松は端役専門のエキストラ俳優。
ロープウェイの仕事も掛け持ちしている。
時代劇で大勢のエキストラとともに、砂埃をあげながら駆けていく宮松。
ヤクザのひとりとして銃を構える宮松。
ビアガーデンでサラリーマンの同僚と酒を酌み交わす宮松。
来る日も来る日も、斬られ、撃たれ、射られ、時に笑い、そして画面の端に消えていく。
そんな宮松には過去の記憶がなかった。
ある日、谷という男が宮松を訪ねてきた。
宮松はかつてタクシー運転手をしていたらしい。
藍という12歳ほど年下の妹がいるという。
藍とその夫・健一郎との共同生活が始まる。
自分の家と思えない家にある、かつて宮松の手に触れたはずのもの。
宮松の脳裏をなにかがよぎっていく・・・。
Comments
&Reviews
斬新!!
今年の映画祭において、最も驚かされた映画。
なかなかお目にかかれない独特な作品だ。
──ホセ=ルイス・レボルディノス(サンセバスチャン国際映画祭ディレクター・ジェネラル)
『宮松と山下』は独創的で楽しく、興味深い発見に溢れている。
香川照之が、ある種カリスマ的な主人公を演じて見事。
サンセバスチャン国際映画祭で最も驚かさせられた作品のひとつ。
――No es cine todo lo que reluce
『宮松と山下』は、視覚的な驚きを与えながら、
感情や哲学的な考察を引き起こすアイデアにあふれている。
――El Contraplano
ファーストシーンから特別ななにかを持っている。
冒頭から続く虚構世界が好奇心を刺激し興味深い。
現実とフィクションの狭間で監督たちが戯れている。
この映画のアプローチは非常に興味深い。
――berria
主人公を中心とした実存的なコメディ。
その主人公を現代日本映画の顔として知られる香川照之がカリスマ性を持って演じている。
彼の注目に値する存在感が、映画をさらに発展していく。
――Le Polyester
極めてゆっくりと進むデリケートな映画。
――DIRTY MOVIES
生きるためだけの淡々とした年月はそれだけでも意味のあることやったんや。
ラストシーンの主人公の選択は…
過去が自分の今とこれからを作る。
私はやっとこの映画で生き死にいく事が最大の目標と、納得やで。
――綾戸智恵(ジャズシンガー)
あれは もうひとりの自分。
記憶喪失で エキストラ役者からでも 人生はもう一度やり直せる。
表と裏のリバーシブル。
さぁ出番だ。宮松も山下も香川も。
――高田文夫(放送作家)
人間は常に何か演じている、それは意図的であれ無意識であれ。
その人間を桁違いに演技が上手い香川さんが演じている。
そしてその境界は実は本人にもわからないのかも知れない、などと見た後に思ってしまった映画でした。
――澤本嘉光(クリエイティブディレクター、CMプランナー)
純喫茶にたたずむ歓びに似ている。
未知の年輪が運ぶ余白の豊かさ。
記憶喪失者は静かで濃密。
無駄がないのに彫りが深い時空。
それを純・日本映画と呼んでみたい。
――相田冬二(Bleu et Rose/映画批評家)
記憶が戻れば行先が決まる。
寄せ木細工のように虚実の欠片を組みながら、そんな作劇の常道をひっくり返す妙技にうなる。
記憶喪失は、宙吊りの愛にもがく潜在意識が開いたアジール(隠れ場)のよう!
――後藤 岳史(映画ライター、編集者)
人を映すという行為の裏の裏まで明かしたところに一体何が残るのか。
これが、5月の罪深き企みであり、検証である。
虚構の世界がなければ、現実の世界を生きられないのは宮松だけでない、きっと、私たちも。
――金原由佳(映画ジャーナリスト)
(敬称略/順不同)