◆イントロダクション◆

旅先のパリで出会った女性に、ひとめで恋に落ちた男ソンナム。 「君のことが気になってしようがない」 「奥さんがいる人なんてごめんだわ」 とまらない恋心があらわにしていく、男と女のホントの気持ち、本当の自分。 ふたりの恋のゆくえが、ウィットに富んだ会話で軽やかに綴られるロマンス・コメディ。

■思いがけなくおとずれた恋。ひとときのアバンチュール。徐々にあらわになる「男と女の本音」を描く小粋な恋のかけひき劇

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妻をソウルに残し、一人パリを訪れた画家のソンナム。パリの日々を怠惰に過ごす彼の目の前にある日、太陽のように溌剌とした魅力あふれる画学生ユジョンが現れる。妻を気にかけながらも、日を追うごとにユジョンに心奪われてしまう。直球で思いをぶつけるソンナムに、「不倫なんてまっぴらよ」と最初はそっけないユジョンだったが、徐々に心を開きはじめる。 思いがけず旅先でおとずれた恋は、次第にふたりの本性をあらわにしていく。「昼は恋した女を口説きながら、夜は故郷に残した妻に甘えてしまう」男の二面性と、「少女のように無邪気にふるまいながら、ときどき魅惑的な態度で男を翻弄する」女の多面性。互いの気持ちをカードのように見せあいながら彼らが繰り広げる恋のかけひきが、ウィットに富んだ会話で軽やかな綴られるロマンス・コメディの傑作が誕生した。何度恋を繰り返し、いくつ歳を重ねても、恋に落ち、愛することをやめられないふたりの姿に、誰もがいとおしさを感じずにはいられないだろう。

■舞台は、恋の街・パリ。“観光映画”よりディープな「普段着のパリ」の魅力満載!

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舞台となったのはフランス・パリ。ホン・サンス監督初となる海外ロケが敢行されたきっかけは1本の電話から。ニューヨークにいたホン監督が夜中にふと思いついて妻に電話をしたところソウルは昼だった。「人は誰もが時間にしばられて生きているのに、同じ時間でも夜と昼がある」と気づいたことから本作の着想を得た監督は、直感から舞台を光降り注ぐ夏のパリに設定、ほぼ全編がパリで撮影され、カフェや駅前、公園といったパリの街角から、郊外のドーヴィル、名門美術学校エコール・デ・ボザールといった“普段着のパリ”を楽しむことができるのも本作の魅力の一つ。唯一登場する世界的に有名な観光地がオルセー美術館で、ここでは主人公のソンナムが、写実主義の代表画家クールベの傑作「世界の起源」を鑑賞するシーンが撮影された。滅多に撮影許可が下りないことで知られる同美術館だが、本作に限っては監督がフランスで絶大な人気を誇るホン・サンスであるという理由で、無料での貸出が快諾された。

■世界が絶賛! 男女の心の機微を絶妙の会話劇で魅せる、奇才ホン・サンスと、彼に魅せられて集まった個性派キャストたち

監督は、フランスをはじめヨーロッパ各国で“韓国のゴダール”“エリック・ロメールの徒弟”と評され、ホ・ジノ、キム・ギドク、イ・チャンドン、ポン・ジュノら韓国映画界を代表する監督たちもその才能に一目置くなど、国内外で絶大な支持を受ける奇才ホン・サンス。2008 年ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品された本作は、各国メディアから大絶賛を浴びた。本国・韓国でも数多くの賞に輝き、韓国が世界に誇る名監督としての地位をゆるぎないものとした。恋愛における男女の心の動きを絶妙の会話劇でみせてゆくのが持ち味だが、本作では洗練されたセリフのやりとりに一層磨きをかけ、ウッディ・アレン作品やルビッチ作品を思わせる、これまで以上に軽やかなロマンス・コメディに仕上げた。 また、主人公ソンナム役に、劇団出身の個性派俳優キム・ヨンホ。映画『ユリョン』『SSU』や歴史ドラマ「薯童謠(ソドンヨ)」の残虐な法王などワイルドな役が多かった彼だが、本作では妻帯者ながら恋に突っ走る男ソンナムを演じ、軽妙な味わいゆたかな演技が高い評価を受けた。ソンナムがひとめで恋に落ちるユジョン役にはパク・ウネ。台湾ドラマ「Silence 〜深情密碼〜」の可憐なヒロインを演じアジア中で注目を集め、ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」のイ・ヨンセン役で人気を不動のものとした彼女は、かねてからホン・サンス監督作品の大ファンで彼の映画に出演すべくオーディションを受けてきたものの不合格、4度目にしてようやくヒロイン役を射止めた。だが、本作の製作中に資金調達が難航し、それを知ったパク・ウネはノーギャラでの出演を申し出、キム・ヨンホらほかのキャストもギャランティを減らし製作費の節約に協力したという。そして、ドラマ「コーヒープリンス1号店」で大ブレイクしたイ・ソンギュンが、ソンナムがパリで出会う北朝鮮の青年を演じ、短い出演シーンながら強烈な印象を残しているほか、99 年のドラマ「ホジュン 宮廷医官への道」で人気を博したもののしばらく芸能界から遠ざかっていたファン・スジョンが、ソンナムの妻役に扮し映画復帰を遂げたのも話題となった。

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