映画『サラエヴォの銃声』|ダニス・タノヴィッチ監督(『ノー・マンズ・ランド』『鉄くず拾いの物語』)最新作 その引き金を引いた者は、英雄なんのか、テロリストなのか。
3/25(土)~
監督・脚本 ダニス・タノヴィッチ
原案 ベルナール=アンリ・レヴィ(戯曲「ホテル・ヨーロッパ」)
撮影 エロル・ズブツェヴィッチ
編集 レドジナルド・シメク
出演 ジャック・ウェバー、スネジャナ・ヴィドヴィッチ、イズディン・バイロヴィッチ、ヴェドラナ・セクサン、ムハメド・ハジョヴィッチ
配給 ビターズ・エンド
2016年/フランス=ボスニア・ヘルツェゴビナ/原題:Smrt u Sarajevu /英題:DEATH IN SARAEVO/85分/シネマスコープ
「第66回ベルリン国際映画祭 銀熊賞(審査員グランプリ)/国際批評家連盟賞・第89回アカデミー賞外国語映画賞 ボスニア・へルツェゴビナ代表」第一次世界大戦のきっかけとなった皇太子夫妻暗殺、通称サラエヴォ事件から100年の式典。”ホテル・ヨーロッパ”の緊迫は、ふたたび一発の銃声で破られる—

“ホテル・ヨーロッパ”で繰り広げられる、100年前のサラエヴォ事件と現代が交錯する緊迫の85分間──

“ホテル・ヨーロッパ”は、第一次世界大戦のきっかけとなったサラエヴォ事件から100年の記念式典を行うための準備に追われていた。ホテルに集うさまざまな人たち―仕事熱心な美しい受付主任、屋上で戦争と結果についてインタビューするジャーナリスト、100年前の暗殺者と同じ名を持つ謎の男、演説の練習をするVIP、ストライキを企てる従業員たちとそれを阻止しようとする支配人。人びとの思惑が複雑に絡み合い、次第に狂いだす運命の歯車。やがて高まる緊張のなか、ホテルに一発の銃声が鳴り響く——。
「明快かつ大胆!」「風刺に満ちた傑作!」と世界が絶賛! 見事ベルリン国際映画祭で二冠に輝き、本年度アカデミー賞®外国語映画賞ボスニア・ヘルツェゴビナ代表に選出された。

その引き金を引いた者は、英雄なのか、テロリストなのか。
名匠ダニス・タノヴィッチが歴史上最大の事件を現代に呼び起こす!
さまざまな人びとの人生から見える、坩堝と化したこの世界——

アカデミー賞®外国語映画賞など数々の賞を受賞した『ノー・マンズ・ランド』で衝撃のデビューを飾り、『鉄くず拾いの物語』でベルリン国際映画祭三冠に輝いた、名匠ダニス・タノヴィッチ監督。社会問題を題材にしながら、その並外れた演出力で世界を唸らせてきた監督の最新作は、歴史上最大の事件「サラエヴォ事件」を現代に呼び起こし、さらにはヨーロッパの過去・現在を見事にあぶり出す大胆でサスペンス感溢れる傑作だ。
屋上、ロビー、リネン室、ゲストルーム、地下階層と交互に切り取られるさまざまな人びとの人生。登場人物たちが発するリアリティのある台詞の数々。そこから見えるのは、いまだ複雑化しているサラエヴォの悲劇の歴史、混沌としていく人びとの感情だ。手に汗握る展開のなかに差し込まれる、故郷サラエヴォへ向けた監督の風刺を効かせた眼差し。サラエヴォ事件とホテル・ヨーロッパという限られた事件、空間を描きながら、テロが頻発し民族同士の争いが絶えない、いまの世界の縮図を見事に浮き彫りとさせている。

映画に散りばめられた、スリリングな演出──
限られた空間で絶えず動き回るカメラワーク、息を呑むシリアスな演技。

原案は、2014年6月にサラエヴォの国立劇場でプレミア上演された、ベルナール=アンリ・レヴィによる戯曲「ホテル・ヨーロッパ」。サラエヴォのホテルの一室での男のモノローグという設定からアイディアを広げてゆき、監督の手腕によって見事群像サスペンスに昇華させた。戯曲版にも出演するフランスで最も偉大な俳優の一人 ジャック・ウェバーをはじめとした、テレビドラマを中心に活躍するスネジャナ・ヴィドヴィッチや、『サラエボ,希望の街角』のイズディン・バイロヴィッチら役者陣の抜群の存在感、シリアスな演技が映画に重厚さを与えている。さらに監督作品の常連であるエロル・ズブツェヴィッチによる流麗なカメラワークがホテル内を動き回り、緊張途切れぬ心理描写を見事に映し出す。観る者は、同時進行で繰り広げられる混沌とした人間模様をカメラと一緒に目撃していく。

Story

サラエヴォのホテル“ホテル・ヨーロッパ”は、第一次世界大戦のきっかけとなったサラエヴォ事件から100年の記念式典を行うための準備に追われていた。その日、ホテルにはさまざまな人たちが集っていた―仕事熱心な美しい受付主任、屋上で戦争と結果についてインタビューするジャーナリスト、100年前の暗殺者と同じ名を持つ謎の男、演説の練習をするVIP、ストライキを企てる従業員たちとそれを阻止しようとする支配人…。
同時進行にさまざまな場所で、人びとの思惑が複雑に絡み合っていく。やがて次第に狂いだす運命の歯車。
 “ホテル・ヨーロッパ”の緊迫は、100年の時を越えてふたたび一発の銃声で破られることになる——

Cast

ジャック役/ジャック・ウェバー

Jacques Weber

1949年8月23日フランス生まれ。二十歳の時フランス国立高等演劇学校に入学し、俳優としてのキャリアをスタートさせた。70年代から映画『赤いブーツの女』(74)、『C階段』(85)、『ボーマルシェ/フィガロの誕生』(96)、『地上5センチの恋心』(06)や、舞台、TVなどジャンルを超えて数多くの作品に出演する、フランスではなくてはならない俳優の一人。90年に公開されたエドモン・ロスタンによる戯曲の映画化で17世紀に実在した剣豪作家シラノ・ド・ベルジュラックを主人公に描いた『シラノ・ド・ベルジュラック』では、フランス映画界で最も権威あるセザール賞で最優秀助演男優賞を獲得。「ドン・ジュアン」(98)では自身主演で監督・脚本も務めている。本作の原案であるベルナール=アンリ・レヴィによる戯曲「ホテル・ヨーロッパ」にも出演している。

ラミヤ役/スネジャナ・ヴィドヴィッチ

Snežana Vidović

1980年11月29日ボスニア・ヘルツェゴビナ生まれ。主にTV女優として活躍。TV出演作に「Crna hronika」(04)、「Viza zabuducnost」(05-08)、「Zene s broja 13」(09)、「Kriza」(14)、「Lud,zbunjen, normalan」(08-)があり、映画への出演は「Tesko je biti fin」(07)、リチャード・ギア主演でボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の戦争犯罪者を追うサスペンス・アクション『ハンティング・パーティ』(07)に次ぐ3作目となる。

オメル役/イズディン・バイロヴィッチ

Izudin Bajrović

1963年2月9日ユーゴスラビア生まれ。86年から、テレビ、映画含め40作以上の作品に出演。「Viza za buducnost」(02)、「Gori vatra」(03)、「Halimin put」(12)などの他、06年にラスミヤ・ジュバニッチ監督作『サラエボ, 希望の街角』にも出演している。

ヴェドラナ役/ヴェドラナ・セクサン

Vedrana Seksan

1976年4月25日ボスニア・ヘルツェゴビナ生まれ。国内での映画、テレビドラマへの出演の他、スペインで発表された「TerritorioComanche」(97)や、オーウェン・ウィルソン主演でボスニア・ヘルツェゴビナのセルビア人武装勢力に撃墜された航空機からの兵器官制士の脱出劇を描くアメリカ映画『エネミー・ライン』(01)など世界で活躍する。女優として活躍する一方で「Zene s broja 13」(09)では脚本も担当している。

ガヴリロ・プリンツィプ役/ムハメド・ハジョヴィッチ

Muhamed Hadžović

1984年7月16日ボスニア・ヘルツェゴビナ生まれ。国内のTVドラマ「Pecat」(08-09)、「Turetskiy tranzit」(14)などに出演する一方で、ショーン・ビーンがFBIのスパイ役を演じるアクションドラマ「Legends」(15)にも出演。長編映画は「Snijeg」(08)に続き2作目。

Staff

原案:ベルナール=アンリ・レヴィ

Bernard-Henri Lévy

1948年11月5日フランス領アルジェリア(現アルジェリア)生まれ。哲学者であり、小説家、コラムニスト。これまでに哲学、フィクション、自伝など30冊以上の本を出版するベストセラー作家。68年5月にフランスで起こった、個人の自由を求める大規模な学生と労働者による政府への抗議活動を経験した世代の哲学者たち"Nouveaux Philosophes(新哲学派)“のリーダーのひとり。84年に発表した自身初の小説「Le Diable en tête」ではフランスで最も権威のある文学賞・メディシス賞受賞。本作の原案である戯曲「ホテル・ヨーロッパ」はサラエヴォ事件から100年後の2014年6月27日、サラエヴォの国立劇場にてプレミア上演され、その後9月にはパリでも上演された。アメリカの新聞ボストン・グローブでは「今日のフランスにおいて最も著名で知的な人物」と賞された。

撮影:エロル・ズブツェヴィッチ

Erol Zubčević

撮影監督として多数の作品に参加。ダニス・タノヴィッチ監督作は「Prtljag」(11)、『鉄くず拾いの物語』(13)、『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』(17)に続き4作目。

編集:レドジナルド・シメク

Redzinald Simek

05年「Ljubav na granici」に編集アシスタントとして入り、数多くのドキュメンタリーやショートフィルムでカラリスト、編集アシスタントを担当。俳優としても活動する。長編映画の編集を手がけるのは「Sa mamom」(13)、「Ponts deSarajevo」(14)、「Nasa svakodnevna prica」(15)に次ぎ本作が4作目。