STORY

昭和63年の夏、山口県下関市。川辺と呼ばれる地域に篠垣遠馬(菅田将暉)は住んでいた。産みの母、仁子(田中裕子)は川一本隔てた魚屋で一人暮らしをしている。戦争中、空襲に遭い、左腕の手首から先を失った仁子は、戦争が終わってから数年後、父の円(光石研)と出会い結婚した。その時、彼女は知らなかった、円がセックスの時、女を殴りつける癖があることを。遠馬が生まれてから、仁子は籍を抜かぬまま、遠馬を家に残して魚屋に移り住んだ。

17歳の誕生日を迎えたその日、遠馬は千種(木下美咲)と社の神輿蔵の中でセックスした。父と同じように性に溺れる自分を嘆く遠馬。 「馬あ君は殴ったりせんやん」「殴ってから気がついても遅いやろうがっちゃ」

いま円と遠馬と一緒に住んでいるのは琴子(篠原友希子)だ。飲み屋街の店に勤める琴子は、円に殴られ、よく頬や目の周りに痣を作っていた。 ある日、琴子は遠馬に赤ちゃんができたことを報告する。 「馬あ君は承知してくれるかいねえ」「なんでそんなこと俺に訊かんといけんの?」 遠馬は家を飛び出すと千種を神輿蔵へ呼びつけ、千種を押し倒す。

祭の前日、大雨の中を琴子は出ていった。家へ戻って来た父に、遠馬は琴子がもう家へ戻らないことを教える。「わしの子、持ち逃げしやがってから!」下駄を履き、琴子を探しに飛び出した円は、遠馬を待つ千種がいる神輿蔵へと向かっていく――。

©田中慎弥/集英社・2013 『共喰い』製作委員会