第十八回東京国際映画祭 史上初の四冠獲得!
「満場一致でグランプリは決まりました。
審査員全員がこの作品を好きになった」
───東京国際映画祭審査委員長 チャン・イーモウ

もとは農耕馬だったという輓馬(ばんば)たちが数百キロ以上もあるソリを曳きながら障害を越える、北海道の開拓精神が生んだレース“ばんえい競馬”。巨体を前かがみにしながらありったけの力を尽くす輓馬は、ときに歩みを止め、呼吸を整えながら、ゆっくりと確実に進んでいく。そんな馬たちに、つまずきながらも明日を見つめて生きていこうと奮闘するひとりの青年と家族の姿を重ね合わせた、日本映画の傑作が誕生した。

いつまでも消えることなく胸に残る爽やかな感動作

厩舎での暮らしのなかに織り込まれるのは、一度は故郷を棄てた学と兄との不器用な対峙、年老いた母とのショッキングな再会。これは人生の居場所を失った青年が再びスタートラインにつく物語であり、かけがえのない絆を浮き彫りにしていく家族の物語でもある。馬の白い鼻息や立ち上る湯気を幻想的に映し出し、北海道・帯広の凍てつく空気を吸い込んだような映像。役者たちの心のこもった演技。輓馬のおおらかでパワフルな存在感。そのすべてが調和して、観る者に爽やかな感動をいつまでも消えることなく胸に残す。

名匠・根岸吉太郎監督が紡ぎだす、再生と家族の物語。

メガホンを握ったのは、1981年の『遠雷』でブルーリボン監督賞を受賞して以来、数々の話題作を手がけてきた名匠・根岸吉太郎。そのきめ細やかで確かな演出が評価され、東京国際映画祭ではグランプリ、監督賞、最優秀男優賞、観客賞の四冠を受賞した。日本映画のグランプリ受賞は、相米慎二監督の『台風クラブ』以来の快挙となる。本作では“ばんえい競馬”の迫力に迫りながら、失われつつある現代日本の家族像に、ひとつの希望を与える物語を紡ぎだした。

伊勢谷友介、佐藤浩市、小泉今日子、吹石一恵 豪華競演!

俳優陣には根岸監督とは初顔合わせとなる面々が集結した。都会暮らしへの憧れを捨てきれない学に、今後も出演作が目白押しの若きキーパーソン・伊勢谷友介。厳しいなかに父性をにじませる愛情あふれる兄・威夫に、本作により東京国際映画祭にて最優秀男優賞を受賞した佐藤浩市。厩舎で働く青年たちの母親的存在である賄い婦を『空中庭園』でさらなる存在感を発揮した小泉今日子、挫折から立ち上がろうとする女性騎手を吹石一恵がフレッシュに演じている。また学に馬券の買い方を伝授する老人役の山崎努、母親役の草笛光子をはじめ、津川雅彦、香川照之、椎名桔平など、実力派俳優たちが顔を揃えた。

『風花』から「輓馬」、『雪に願うこと』へ

原作は相米慎二監督の『風花』に続く映画化となる、帯広在住の作家・鳴海章の小説「輓馬」。うらぶれた男女が北海道を旅する『風花』と同様に、社会のレースから脱落した人々の再生をじっくりと描き出している。原作者からいち早く手渡された「輓馬」を読んだ相米監督が映画化を希望していたが、2001年に他界。ともに日本映画界を牽引してきた根岸吉太郎監督がその遺志を引き継ぎ、『雪に願うこと』として実を結んだ。