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ものがたり

涙も枯れ果てる――。圧倒的な自然の前で人間が非力なように、小さな希望も砕かれるのか。

ある日の明け方、静かな入り江。数々の船が朽ち果てている。長い橋のすぐ脇に立つ古ぼけた家――コーリャが祖父の代から住み続けている、温室と彼の仕事場でもあるガレージのある小さくて慎ましい居心地の良い家。

コーリャはモスクワから遠く離れた田舎町で自動車修理工として、息子のロマと若く美しい妻リリアと3人で暮らしている。ロマは継母であるリリアになかなか心を開かず口答えばかりだ。

 

コーリャは市を相手取り訴訟を起こしている。彼の土地を市が収用しようとしているのが不満なのだ。そのために友人の弁護士ディーマをモスクワから呼び寄せた。ヴァディム市長の悪事の証拠を掴んだディーマはこれを使って巧妙に攻めれば勝てる、と言う。

裁判。0.27ヘクタール(2700㎡)の土地を市が収用するにあたり、コーリャは土地の買い上げ金額として350万ルーブル(約760万円)を要求した。しかし、裁判所は市が提示した約64万ルーブル(約140万円)を支持した。

市長が過去にした悪事の証拠を握っていることを伝え、コーリャの家の件から手を引くように脅すディーマ。350万ルーブルを支払うことに同意させる。

 

ディーマが去った後に怒り狂う市長。自分の意のままに動く判事と検察官と警察官を呼びつける。ディーマが生命線を握っている状態では1年後の選挙には勝てない、ヴァディムが市長から退けば判事たちもそれぞれの地位を保つことはできない……。なんとか虫けらたちを蹴散らしたいと、考えを巡らせる。

落ち着かない市長は司祭に相談しようとする。しかし、司祭は懺悔でなければ聞きたくない、問題は自分で解決しろ、と拒絶する。心を決めるヴァディム市長。

 

ディーマによって、すべては解決するかに見えた。しかし、この小さな町に留まりたくないリリア、自分のすべてである町から離れたくないコーリャ。気持ちはすれ違い始める。

悪に染まってでも、目的を達成しようとする市長。少しずつ少しずつ崩れ始めた家族の均衡はこのまま保てるのだろうか……。