「愚かさとその代償」という、人間が逃れられないテーマに真っ向から組み合った作品だ。
描かれている心情や行動全てがナチュラルで、驚くほど国の遠さや文化の隔たりを感じない。
身を切られるような気持ちで彼らの旅路を見つめながら、「光のほうへ」と祈っていた。
― 西川美和(映画監督)
一年前、僕は映画の舞台デンマーク・コペンハーゲンを妻と幼い娘と歩いた。
主人公たちの背後に見覚えのある風景がいくつも出てきた。
北欧はいつも光と闇の二面性を抱えている。
あのやさしいラインを持つ北欧デザインは長く暗い冬があるからこそ産まれた。
この映画もそれに似ている。厳しく重い現実が目の前にあるから、未来に続くほのかな光がそこに見えてくる。
―小林キユウ(写真家)
虐待を受けて育った兄弟の成長後をリアルに描く。アルコール・薬物依存症、性犯罪が
世代を超えて連鎖していく非情さゆえに、その中にたったひとつの希望の種がまかれることの
希少さが心に沁みる。
見終わった後、題名どおり光のほうに向かおうとする明るさだけが残る。
―信田さよ子(原宿カウンセリングセンター所長)
役者一人ひとりの存在感に引き込まれました。特に兄の、すさんだ中でも持ち続ける純愛と
子供に対する愛情に“光”を見出しましたが、あなたは?
―大宅映子(評論家)
「社会福祉の先進国」デンマークにもアルコール・薬物依存問題はある。
この問題に伴う「負の家族遺産」の世代間連鎖はどこの社会も変わらない。
この映画は荒涼とした現実の中に世代間連鎖を断つための光を見つけようとしている。
―斎藤学(精神科医・家族機能研究所代表)
不条理な世界に生まれ、負のスパイラルに陥っても、弱きものに対する優しさに溢れているから
この人たちは鬼にならずにいられるのだと思う。
―若木信吾(写真家)
『光のほうへ』は遠い北欧の暗部ではない。きっと日本の暗部でもある。
薬や酒への依存がいかに怖いかではなく、いかに哀しいか、この作品はつきつけてくる。
―姫野カオルコ(作家)
大人になると消えていく光を、子供は誰も持っている。
見えない光の中でもだえ苦しむ人がいる、、、愛という実態をつかむために。
―奥田瑛二(映画監督・俳優)
とことん荒れ果てた現実にきれい事はなく、目をふさぎたくなる時もありますが、
最後には主人公ニックを応援したくなります。辛い実態を直視する監督の目にぶれはありません。
―ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
人の心は世界みな一緒や。なんぼ社会福祉が整った国でも落とし穴はある。
ニックは多くを失ったけど小さな命の光だけはずっと消えずにいた。
そしてその命にまた出会った時生きる力は戻った。その名はマーティン。
人に必要な物はキズナ。共にすこし引き合う心とちゃうか。