Bitters End
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『素敵な歌と舟はゆく』
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解説 < 素敵な歌と舟はゆく
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数学と音楽と絵画。
ストーリー・ボードに見る
オタール・イオセリアーニの作風。

ヨーロッパではすでに絶大な評価を集め、日本でも新作の劇場公開が永らく待たれていた、グルジア出身の巨匠オタール・イオセリアーニ。
 多数の登場人物が交錯し繰り広げる、複数の物語を同時進行で描くコメディで知られるイオセリアーニですが、独特なユーモアの感覚、ゆったりとした作品の雰囲気、軽快な音楽など、ノンシャランとした作風は、本作『素敵な歌と舟はゆく』でも健在です。
 一見、フリーハンドのようにみえるこの作品の軽やかさは、決していきあたりばったりではなく、周到な計画に基づいたものであることは、ウィリアム・ルプシャンスキーによる移動を伴う長回しの見事なカメラワークを観ればわかることでしょう。
 このカメラワークを実現するために、イオセリアーニは全カットについて細かいストーリー・ボードを作成し、撮影に臨みます。ストーリー・ボードには絵コンテとは別に、カメラの動き、役者の立ち位置が明示されています。
 アドレス帳からキャストを探す、と言われるように、イオセリアーニは演技経験のない知り合いをメインキャストとして出演させることが多いので、彼らにはシナリオではなく、ストーリー・ボードに台詞を書き込んで、撮影の直前に渡します。この手法が瑞々しい芝居を引き出し、絵画のような美しい画面を作り上げるのです。
 そして、この美しい画面を軽快に盛り上げるのは、ニコラ・ズラビシュヴィリによる音楽と、幾重にも重ねて録音された街の喧騒や、どこからともなく街に流れるメロディー、登場人物たちが口ずさむ歌の数々。
 歌えて人間臭さのあるグルジア系の役者を見つけられなかった、という理由で、本作にはイオセリアーニ自身が出演していますが、酒飲みで怠け者、でもどこか憎めないキャラクターとして父親役を怪演しただけでなく、美声まで披露するなど、センスの良い趣味人ぶりも存分に発揮しています。

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