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本年度アカデミー賞®主演男優賞(ケイシー・アフレック)&脚本賞(ケネス・ロナーガン)受賞!6部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞、脚本賞)ノミネート!きっとこの映画は、ずっと忘れがたい一本になる。
忘れられない痛みと哀しみ。傷ついた心にそっと寄り添うように、一人の男の絶望と再生を丁寧に優しく紡いだ珠玉の人間ドラマ。
アメリカ・ボストン郊外でアパートの便利屋として働くリーは、突然の兄の死をきっかけに故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ってきた。兄の遺言で16歳の甥パトリックの後見人となったリーは、二度と戻ることはないと思っていたこの町で、過去の悲劇と向き合わざるをえなくなる。なぜリーは心も涙も思い出もすべてこの町に残して出て行ったのか。なぜ誰にも心を開かず孤独に生きるのか。父を失ったパトリックと共に、リーは新たな一歩を踏み出すことができるのだろうか・・・・・・?
世界各国で映画賞を総なめし、本年度アカデミー賞主演男優賞、脚本賞の2冠に輝いた『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。『ギャング・オブ・ニューヨーク』でアカデミー賞脚本賞にノミネートされたケネス・ロナーガンが監督・脚本を手がけ、俳優マット・デイモンがプロデューサーを務めたことも大きな話題となっている本作は、主人公リーの絶望と再生を、時折ユーモアを交えながら丁寧に紡ぎ出した珠玉の人間ドラマ。慎ましくも深く、静かに心に染み入る新たな傑作がここに誕生した。この映画は、今年一番、そしてこれから先もずっと、忘れがたい一本となるに違いない。
主演男優賞を独占したケイシー・アフレックをはじめキャスト全員が好演!マット・デイモンが「忘れられないものになった」と自負するプロデュース作
主人公リーを演じるのは、本作のプロデューサーであるマット・デイモンの幼い頃からの親友であり盟友であるベン・アフレックの実弟、ケイシー・アフレック。主人公リーの孤独と哀しみを体現した渾身の演技は、「素晴らしい!」「偉大な俳優たちの仲間入りを果たした」と各メディアがこぞって絶賛し、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞をはじめ各賞の主演男優賞を独占した。リーの元妻ランディを演じたミシェル・ウィリアムズは本作で4度目のアカデミー賞ノミネートをはたし、ニューヨーク映画批評家協会賞ほかで助演女優賞を獲得。また、『ギルバート・グレイプ』の原作・脚本を手がけた脚本家・監督のピーター・ヘッジズを父にもつルーカス・ヘッジズが甥パトリック役を演じ、溌剌だが思春期特有のナイーヴさも併せ持つ16歳の少年の心を見事に表現し、シカゴ映画批評家協会賞有望俳優賞、ナショナル・ボード・オブ・レビュー ブレイクスルー・パフォーマンス賞ほか数々の賞を受賞。アカデミー賞助演男優賞にもノミネートされ、今や最も注目される若手俳優の一人となった。
本作のプロデュースを手がけたのは、『ボーン・アイデンティティー』シリーズなどハリウッドを代表するスターの一人として活躍するマット・デイモン。本作は当初、プロデュース・監督・主演をマット・デイモンが務める予定で、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でオスカーを獲得した脚本家でもあるデイモンが「彼の脚本は唯一無二」と絶大な信頼を誇るケネス・ロナーガンに脚本を依頼。だが、デイモンのスケジュールの都合によりケネス・ロナーガンが監督を、そして、主演をケイシー・アフレックが引き継ぐことになった。その結果、「力ある役者と脚本、そしてケニーの演出によって、この映画は忘れられないものになった」とデイモン。ゴールデン・グローブ賞授賞式では、ケイシー・アフレックが受賞スピーチで、「主役を譲ってくれてありがとう」とマット・デイモンに謝辞を述べたことも大きな話題となった。
アメリカ・ボストン郊外でアパートの便利屋として働くリー・チャンドラーのもとに、ある日一本の電話が入る。故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーにいる兄のジョーが倒れたという知らせだった。
リーは車を飛ばして病院に到着するが、兄ジョーは1時間前に息を引き取っていた。
リーは、冷たくなった兄の遺体を抱きしめお別れをすると、医師や友人ジョージと共に今後の相談をした。兄の息子で、リーにとっては甥にあたるパトリックにも父の死を知らせねばならない。

ホッケーの練習試合をしているパトリックを迎えに行くため、リーは町へ向かう。見知った町並みを横目に車を走らせるリーの脳裏に、過去の記憶が浮かんでは消える。仲間や家族と笑い合って過ごした日々、美しい思い出の数々——。

兄の遺言を聞くためパトリックと共に弁護士の元へ向かったリーは、遺言を知って絶句する。「俺が後見人だと?」
兄ジョーは、パトリックの後見人にリーを指名していた。弁護士は、遺言内容をリーが知らなかったことに驚きながらも、この町に移り住んでほしいことを告げる。「この町に何年も住んでいたんだろう?」
弁護士の言葉で、この町で過ごした記憶がリーのなかで鮮烈によみがえり、リーは過去の悲劇と向き合わざるをえなくなる。なぜリーは、心も涙も思い出もすべてこの町に残して出て行ったのか。なぜ誰にも心を開かず孤独に生きるのか。

リーは、父を失ったパトリックと共に、この町で新たな一歩を踏み出すことができるのだろうか?
ケイシ―・アフレック
1975年8月12日、アメリカ・マサチューセッツ州生まれ。10代からテレビに出演し、『誘う女』(95/ガス・ヴァン・サント監督)で映画デビュー。2007年には兄ベン・アフレックの初監督作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』で主演を務めた。そのほかおもな出演作に、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97/ガス・ヴァン・サント監督)、『オーシャンズ11』(01/スティーヴン・ソダーバーグ監督)、共演のマット・デイモンと共に脚本も手がけた『GERRY ジェリー』(02/ガス・ヴァン・サント監督)、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた『ジェシー・ジェームズの暗殺』(07/アンドリュー・ドミニク監督)、『キラー・インサイド・ミー』(10/マイケル・ウィンターボトム監督)、『セインツ―約束の果て―』(13/デヴィッド・ロウリー監督)、『インターステラー』(14/クリストファー・ノーラン監督)などがある。近作に、『セインツ―約束の果て―』に続いてデヴィッド・ロウリー監督、ルーニー・マーラと再タッグを組んだ「A Ghost Story」(17)。本作で第89回アカデミー賞主演男優賞を初受賞した。 2014年、ジョン・パワーズ・ミドルトンと共に、さまざまなジャンルの映画・TV作品に企画から携わる製作会社「アフレック/ミドルトン・プロジェクト」を設立。監督としても活躍し、『容疑者、ホアキン・フェニックス』(10)では監督・脚本・製作・撮影も手がけた。2002年、ケネス・ロナーガンの舞台「This is our youth(これが僕らの青春)」でもマット・デイモンと共演した。
——あなたが演じたリー・チャンドラーについて教えてください。
「マンチェスター・バイ・ザ・シーという町が舞台で、僕が演じるリーの現在と過去が交差して物語が進んでいくんだ。ミシェル・ウィリアムズ演じる女性が元妻で、とても悲惨な事故が起きるんだけど、その事故の責任は僕にあると、僕も一部の人も思ってる。結果的に妻とは別れ、町を出ることになってしまう。その後、兄が亡くなり、ルーカス・ヘッジズ演じる甥のため町に戻るんだけど、本当はもうここには二度と戻りたくなかった。多くの住民は、僕が悪い男で事故を引き起こした張本人だと信じてるからだ。ただ、なかなか笑える映画でもあるよ」
——リーを演じてみての感想は?
「最高だったよ。難しい場面や深刻な場面を撮影する日が多くて、1日の大半をセットで過ごす日々が延々続いたけど、ルーカス·ヘッジズたちと会話を楽しんだよ。共演したシーンにはとてもおもしろいシーンもあった。一見冗談っぽくないけど、大げさで馬鹿げたことよりおもしろくて、もっともらしいと感じた。僕が好きなタイプの“笑い”だった」
——もともとの物語の構想はマット・デイモンによるもので、ケネス・ロナーガン監督が引き継いだそうですね。
「構想にはマット以外にも関わっている人がいたと思いますが、マットがケネスに脚本を依頼したのは賢い選択だよね。ケネスは最高の脚本家の一人だから。物語の“種”を元にして、とても素晴らしい物語を作り上げた」
——ケネスはどうやって彼自身は知らない町の地元感を出したんでしょうか?
「そう、彼はマンチェスター・バイ・ザ・シーに行ったことがなかったと思う。彼の『ユー・キャン・カウント・オン・ミー』や『マーガレット』はニューヨークが舞台だ。ほかにも彼は南部のどこかの町を舞台にした、劇の脚本を書いたこともある。彼の脚本はまるで地元で育った人が書いたとしか思えないものだ。耳がいいだけでなく、たぶん万人に通じる話し方に精通してるのだと思う。地域特有のアクセントやスラング、口調なんかは身につけることが可能だけど、脚本で重要なことは、物語の内容や登場人物たちの描写の仕方。彼の脚本は魔法みたいだよ。登場人物はみな複雑で、本物の人間みたいだ」
——この役を演じるために、どんな準備をしましたか? 土地の下見をしたりとか。
「例えば自分の弱点を徹底的に考えたり、演じるにあたっての準備はいろいろある。もし僕がアマゾンで10年暮らした人を演じるなら、アマゾンで生き延びる方法を考えるために現地へ行くだろう。だけど今回は、マンチェスター・バイ・ザ・シーという町に行ったこともあるし、言葉や暮らしも知っていた。何より今回は、物語や場面、登場人物の関連性に矛盾点がまったくない、素晴らしい脚本があったから、迷わずに信頼して進めばいいと分かってました。だから僕がすべきことは、セットに現れて正しい感情を表現するのみだった。例えば僕が兄の遺体と対面する場面なら、身元確認をしてお別れをする。言うまでもなく楽しい気分でセットに現れたりなんかしないよ。本当にうろたえているように演じただけだけど、一つのことだけに集中すればよかったので僕にとっては楽でした。ケネスも共演者たちも素晴らしかったので、ただ、登場人物の感情を意識するだけでよかったんだよ」
1980年9月9日、アメリカ・モンタナ州生まれ。1994年、映画『名犬ラッシー』(ダニエル・ペトリ監督)でデビュー。『ブロークバック・マウンテン』(05/アン・リー監督)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ注目を集める。おもな出演作に、共演のライアン・ゴズリングと製作総指揮も務めた『ブルーバレンタイン』(10/デレク・シアンフランス監督)、『シャッター アイランド』(10/マーティン・スコセッシ監督)、『テイク・ディス・ワルツ』(11/サラ・ポーリー監督)、『マリリン 七日間の恋』(11/サイモン・カーティス監督)、『オズ はじまりの戦い』(13/サム・ライミ監督)など。本作で、『ブロークバック・マウンテン』『ブルーバレンタイン』『マリリン 七日間の恋』に続く4度目のオスカー候補となったほか、ニューヨーク批評家協会賞などで助演女優賞を受賞した。次作は夭折した女性歌手ジャニス・ジョプリンの伝記映画『ジャニス(原題)』。
1965年9月17日、ニューヨーク州バッファロー生まれ。ジョージア大学演劇科卒業後、TVや映画、舞台で活躍。TVドラマ「フライデー・ナイト・ライツ」(06−11)のエリック・タイラー役で知られ、このドラマのファイナル・シーズンでエミー賞主演男優賞を受賞。2015年から続く人気TVドラマ「ブラッドライン」にも出演。おもな映画出演作に、『キング・コング』(05/ピーター・ジャクソン監督)、『SUPER8/スーパーエイト』(11/J・J・エイブラムス監督)、『ゼロ・ダーク・サーティ』(12/キャスリン・ビグロー監督)、『アルゴ』(12/ベン・アフレック監督)、『ブロークンシティ』(13/アレン・ヒューズ監督)、『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』(14/マーティン・スコセッシ監督)、『キャロル』(15/トッド・ヘインズ監督)などがある。
1996年12月12日、ニューヨーク州ニューヨーク市ブルックリン生まれ。父は『ギルバート・グレイプ』(93/ラッセ・ハルストレム監督)の原作・脚本を手がけ、『エイプリルの七面鳥』(03)では監督も務めた作家・脚本家・監督のピーター・ヘッジズ。父が監督した『40オトコの恋愛事情』(07/ピーター・ヘッジズ監督 ※劇場未公開)で映画デビューをはたす。その後、『ムーンライズ・キングダム』(12/ウェス・アンダーソン監督)、『アイ・アム・ニューマン 新しい人生の見つけ方』(12/ダンテ・アリオラ監督 ※劇場未公開)、『グランド・ブダペスト・ホテル』(14/ウェス・アンダーソン監督)などに出演。今作での演技でシカゴ映画批評家協会賞有望俳優賞、ナショナル・ボード・オブ・レビュー ブレイクスルー・パフォーマンス賞ほか数々の賞を受賞し、アカデミー賞助演男優賞にもノミネート。今や最も注目される若手俳優の一人となった。現在はノースカロライナ州立芸術大学に在学中で、通学時以外は家族と共にブルックリンに在住。
1962年10月16日、アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク市ブロンクスに、医者の父と精神科医の母のあいだに生まれる。高校時代から脚本を執筆し、ウェズリアン大学、ニューヨーク大学で脚本・演出を学ぶ。その後、劇作家として活躍し、手がけた作品に、ドラマ・デスク・アワード戯曲賞にノミネートされた「This is our youth(これが僕らの青春)」(96)、ピュリッツァー賞候補に挙がり、ドラマ・デスク・アワード戯曲賞やアウター・クリティック・サークル賞戯曲賞にノミネートされた「The Waverly Gallery(ウェイバリー・ギャラリー)」(00)、ローレンス・オリヴィエ賞にノミネートされた「Lobby Hero(ロビー・ヒーロー)」(01)のほか、「The Starry Messenger(星のメッセンジャー)」(09)、「Medieval Play(中世演劇)」(12)などがある。
映画では、『アナライズ・ミー』(99/ハロルド・ライミス監督)、『ロッキー&ブルウィンクル』(00/デス・マッカナフ監督 ※劇場未公開)などの脚本を執筆し、2002年の『ギャング・オブ・ニューヨーク』(マーティン・スコセッシ監督)ではアカデミー賞脚本賞にノミネートされた。
脚本も手がけた監督第1作『ユー・キャン・カウント・オン・ミー』(00 ※劇場未公開)はアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞脚本賞にノミネートされ、ウォルド・ソルト脚本賞、ニューヨーク映画批評家協会賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞、インディペンデント・スピリット賞の最優秀作品賞と最優秀脚本賞を受賞したほかボストン批評家連盟賞では最優秀新人賞を受賞。アンナ・パキン、マット・デイモン、マーク・ラファロらをキャストに迎えた監督第2作『マーガレット』(11 ※劇場未公開)は撮影終了から完成までに5年以上を費やしたが、国際シネフィル協会賞最優秀女優賞、ヴィレッジ・ヴォイス・フィルム投票最優秀脚本賞(ケネス・ロナーガン)を受賞した。映画『ハワーズ・エンド』がイギリス・アメリカ共同制作でテレビドラマ化されるにあたり、ロナーガンが演出を務めることが先日発表された。現在は、妻であり女優のJ・スミス=キャメロン、娘ネリーと共にニューヨークに在住。
マサチューセッツ州・マンチェスター・バイ・ザ・シーという町
美しさとわびしさを感じる場所だ。おもしろいことに、町自体は裕福なボストン人のリゾート地なのだけど、ブルーカラーの人々がボートのサービスなどで、休暇で訪れる人々をサポートしている。そして周りには労働者の多い町があり、グロスターという町は漁業に苦しんでいる。実生活と自然の美しさが混在する町だ。
主人公リーという男
主人公のリー・チャンドラーはすべてに破たんしている。何か問題を抱えている男だと、見れば誰もが気づくだろう。初めて会った時から心ここにあらずという感じだけど、物語が進むにつれて、彼のことが明らかになる。実は兄と強い絆で結ばれていて、親族とも結びつきが強いことも。親族が彼を気にかけ心配しているから、彼はかろうじて生きているんだ。 人と密接な関わりを持つ弊害は、何か悲惨なことが起きたときに気づかされる。大切に思う人が多いほど、失うことの怖さが何かが起きて初めて分かる。彼は兄のジョーと結びつきが強い。ジョーは心臓に問題があり、リーを必要としていたし、甥のパトリックも父親と同様、リーを必要としていた。だから事故のあとも、リーは消息を絶ったり、行方をくらましたりしなかったんだ。
俳優ケイシー・アフレック
ケイシーは素晴らしい。彼は長年の友人でもあるんだ。初めて一緒に仕事したのは2000年で、以来大好きな役者の一人であり、とても特別な存在だ。 彼は役者なのに決して自慢したり目立とうとしないし、僕も含めエンタテインメント界にありがちな自己愛が強いタイプでもない。彼は演技に重点を置いた芝居に興味を持ち、自分の感情表現を大切にしていて笑いのセンスもある。ハンサムで、自分のすべきことにとても真摯に向き合う。今、最も旬な役者の一人である彼が、この困難な役を引き受けてくれたことをとても幸運に思っている。
脚本について
とにかく書くしかないと思っている。惹きつけられるものは多いけど、書ける物語は限られている。自分が重く感情的なテーマにだけ惹かれているとは思わないけど、感情的な作品に惹かれるようだ。 ユーモアは大好きだ。ユーモアがない人生なんて意味がない。今作も、僕は重く暗い映画だとは思っていない。登場するすべての人が苦しんでいるけれど、それは誰の人生においても起こりうる状況だ。 物語はリーとパトリック、二人の対比を表している。とても悲惨な経験をした男と、大変だけど高校生活を満喫している元気な少年。少年は誰かに面倒を見てもらう必要があるが、同時に彼は叔父が間違いを犯さないよう気をつけたり、ヘルプをお願いしたりしなくてはいけない。この二人のやり取りがおもしろい。
甥パトリックについて
パトリック・チャンドラーはもう一人の主人公で、16歳だ。困難な状況でもとても前向きで、強く生きているおもしろい子。友だちに恵まれ、バンド活動やホッケーにいそしみ、二人の女の子を二股にかけ、高校生活を楽しむ充実した人生だ。彼はとてもいい少年で、父親譲りの心配りができる。一家の支えだった彼の父親ジョーが冒頭で亡くなった時、パトリックの養育は叔父であるリーの手に委ねられる。リーは後見人を託されたことに戸惑い、パトリックはそんな叔父に負担をかけたくない。 充実した今の生活を変えたくないパトリックと、過去の苦しみから逃れたいリー。その違いが浮き彫りになるんだ。
観客に望むこと
観客がどんな感想を抱くかはあまり考えたことがない。僕はただ、物語を現実らしく作るべく努力するだけだ。 僕の願いは、観客が映画を見て、実際に体験した気持ちになってほしい、ということ。感じ方は多岐にわたるだろう。僕が表現したいことを映画として人に見せても、受け取る側の感じ方は千差万別だし、そうあるべきだ。心が揺さぶられ、ジョークに笑い、演技が素晴らしいと感動することを願っている。 そして作り手側の視点ではなく、役者たちの視点で映画を見てほしい。僕が好きなすべての映画や演劇や小説は、他人の目で世界を見せてくれた。これはとても啓発的ですばらしいことだ。すべての文化が存続するのは、多岐にわたる表現方法が存在してこそ。人間にとってとても重要な手段であり、僕にとっても大切だ。
1970年10月8日、アメリカ・マサチューセッツ州ケンブリッジ生まれ。『ミスティック・ピザ』(88/ドナルド・ペトリ監督)で映画デビュー。本作の主演、ケイシー・アフレックの兄であるベン・アフレックは幼い頃からの親友で、ベン・アフレックと共に脚本を手がけた『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97/ガス・ヴァン・サント監督)でアカデミー賞脚本賞を受賞。デイモンはアカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、全米俳優協会賞の主演男優賞にもノミネートされた。2002年『ボーン・アイデンティティー』(ダグ・リーマン監督)が大ヒットを記録し、のちにシリーズ化。シリーズ5作目となる『ジェイソン・ボーン』(16/ポール・グリーングラス監督)までいずれも大ヒットしている。 出演作にはそのほか『プライベート・ライアン』(98/スティーヴン・スピルバーグ監督)、『リプリー』(99/アンソニー・ミンゲラ監督)、『オーシャンズ11』(01/スティーヴン・ソダーバーグ監督)、『ディパーテッド』(06/マーティン・スコセッシ監督)、『インビクタス/負けざる者たち』(09/クリント・イーストウッド監督)など多数。 2000年、デイモンはベン・アフレックと、映画、TV、ニュー・メディアの企画を製作する製作会社ライブプラネットを設立。プロデュースを手がけた作品に、アカデミー賞受賞監督ジェームス・モルの「Running the Sahara(サハラを走る)」、3シーズンに渡り新人脚本家、監督がインディペンデント映画を作る模様を描いたドキュメンタリー「Project greenlight(プロジェクト・グリーンライト)」がある。進行中の企画に「The Battle of Bunker Hill(バンカー・ヒルの闘い)」、ヒュー・ジャックマンが主演予定の「Paul the Apostle(使徒パウロ)」。
起業家、慈善家、プロデューサー。2013年、K Period Mediaを設立。ストーリーを重視し、商業性があり、示唆に富んだコンテンツを映画、テレビ、デジタルと幅広く手がけている。 最近手がけた作品に、アフリカ系アメリカ人と写真の歴史を検証した「Through a Lens Darkly: Black Photographers and the Emergence of a People(原題)」(14/トーマス・アレン・ハリス監督)がある。待機作に、都心部の学生が模擬法廷に挑戦する様子を追った「Looking for Terry(原題)」など。 19歳でブライダルプランニングのビジネスを立ち上げ、大学卒業後ニューヨークシティーへ。WWD、Real Simple、エル・デコなど雑誌の世界でキャリアを積んだ後、2010年にファッション業界で働くプロフェッショナルのためのエージェントKess Agencyを創業。新部門として、ファッション、美容、エンターテインメント業界のクライアント向けの開発・製作に事業を拡大。K Period Mediaの前身となった。
2010年、Media Farmを設立。ガス・ヴァン・サント監督、マット・デイモン、ジョン・クラシンスキーが出演した『プロミスト・ランド』(12)やTVシリーズ「Think Tank(原題)」などを製作。08年には「Kill Theory(原題)」で監督デビューもしている。 ムーアはハーバード大学にてアメリカ史の学士を習得後、Intertalent、ICMにて、脚本家・監督のエージェントとして、ザック・ペン、リッチ・ウェルクス、ワイツ兄弟、M・ナイト・シャマランなどを担当。1993年、エージェント業からプロデューサー業へと転身。大成功を収めた『アメリカン・パイ』(99/ポール・ワイツ監督)シリーズ、『The FEAST/ザ・フィースト』(06/ジョン・ギャラガー監督)、『レインディア・ゲーム』(00/ジョン・フランケンハイマー監督)、『アジャストメント』(11/ジョージ・ノルフィ監督)、そしてアカデミー賞受賞作『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97/ガス・ヴァン・サント監督)など多くの映画を製作。HBOのリアリティ番組「プロジェクト・グリーンライト」の共同製作や、「The People Speak(原題)」や「Pop & Me.(原題)」などドキュメンタリーも手掛けている。 起業家でもあるムーアは、1993年にオンライン音楽ビジネスLaunch Mediaを創設。このビジネスはその後Yahoo!へ売却されYahoo!音楽になった。1999年には、友人でクリエイティブなコラボレーターでもあるベン・アフレック、マット・デイモン、ショーン・ベイリーと共に制作会社LivePlanetを設立。5年間、CEOとして会社の資金調達を行う。2005年、個人の映画制作やテレビ番組制作にもう一度専念するためにLivePlanetのCEOを退いたが、コラボレーションは続いている。現在、米ケーブルテレビStarzとの共同製作でドキュメンタリーシリーズ「The Chair」第2シーズンを製作中。
K Period Mediaの創業メンバー、製作パートナー。プロジェクト開発を担当。 ICP(国際写真センター)、ニュースクール大学にて写真を学び、ストリート、ヒップホップ、世界中の音楽シーンを撮影。その後、クリエイティブ開発、編集、VFX、音楽など多岐に渡るアプローチで、ヴィクトリア・シークレット、バーバリー、コンデナストなどのブランド戦略に携わり、広告業界で活躍。将来性のある脚本家、監督、音楽家のための短編映画やコンテンツを製作している。
スティーヴン・スピルバーグ、スコット・ルーディン、トミー・モトラなどの映画業界の大物のもとで鍛えられ、ハリウッドに強いパイプを持ち、11年にはヴァラエティ誌が選ぶ「注目すべきプロデューサー10人」に選出された。最近、リドリー・スコットの製作会社Scott Free Filmsの新社長として迎えられた。 プロデューサーをつとめた近作に、『プールサイド・デイズ』(13/ナット・ファクソン、ジム・ラッシュ監督)、サイコスリラー「Thoroughbred(原題)」(17/コリー・フィンリー監督)など。今後のプロデュース作品にホラーコメディ「Dead Mall」、ポリティカルアクションスリラー「The Beast」、アクションコメディ「The Heart」、犯罪ノワール「The Eel」、MLBのスター選手ジョシュ・ハミルトンの人生を基にしたスポーツドラマなどがあり、テレビ番組の製作総指揮も務めている。現在、20世紀フォックスによる「The Greatest Showman(原題)」を製作総指揮。監督はマイケル・グレイシー、出演はヒュー・ジャックマン、ミシェル・ウィリアムズ、ザック・エフロンなど。
本作は、2011年の映画『アジャストメント』(ジョージ・ノルフィ監督)のセットから始まった。そこで、マット・デイモンと、彼の長年の協力者クリス・ムーア(*1)はデイモンの監督デビュー作についてブレインストーミングをしていた。俳優ジョン・クラシンスキー(*2)も含めた3人で案を出し合い、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』の種ができた。 当初からデイモンは、ちょっとした判断ミスがきっかけで人生が崩壊してしまう男の話にしたいと思っていた。彼はプロデューサーとしてサインし、監督と主演を務める計画をしていた。「『マンチェスター・バイ・ザ・シー』は、兄の死後、甥の世話することになる男の、美しい映画だ」とデイモンは言う。「問題は、彼にとって故郷に戻ることが、彼の人生における大きな悲劇と向き合うことを意味していたことです」
ロナーガンに脚本依頼をしたのはデイモンだった。二人は、デイモンが、2002年にロンドンでのロナーガンの演劇「This is Our Youth」に主演したときにはじめて出会った。「ケニーの脚本は唯一無二だ」と、彼自身脚本家としてオスカー受賞経験のあるデイモンは語る。「彼の言葉を毎晩繰り返し言っているうちに、なんて完璧で精緻なんだろうと理解できた」
ロナーガンは、ストーリーのきっかけになる出来事、テーマやキャラクターを探求し、広げ、自分自身のオリジナルストーリーにすべく2年を費やした。そして生まれた脚本は、マサチューセッツの海岸で釣りをし、裕福な隣人たちのヨットを修理しながら、兄のジョーと共に育ったリー・チャンドラーの物語を中心にした、複雑で多層的なものになった。 スケジュールの都合で、デイモンが主演と監督を降板することになると、ロナーガンがそれを引き継いだ。しかし、デイモンのプロジェクトへのサポートは制作のためには必要不可欠だったとムーアは言う。
プロデューサーのキンバリー・スチュワード(*3)は、自身の新会社の初製作映画として、ロナーガンの力強い脚本を理由に本作を選んだ。「ケニーの言葉は素晴らしく、主人公の暗部を描きながら、ウィットとユーモアを忘れない。これまで見たことがないものだった」
脚本はプロデューサー、ケヴィン・J・ウォルシュ(*4)の心を動かし涙ぐませた。「脚本を読みながら、僕は何度も泣いた。この脚本の正直さ、真実に心底感動した。だって現実には、物事はいつもきれいにまとまりはしないのだから。人生で一度でも、このような映画に関われることは本当に幸せだ」
ムーアいわく、「ロナーガンは素晴らしい脚本家であるだけじゃない。彼はマスタークラスの監督でもある。誰もが彼のように彼の素材を監督できるわけではなく、微妙なニュアンスがあり、非常に注意深く作られているから、彼にしか正しく扱えない。ケニーは困難な状況にユーモアと命を吹き込んでくれた。僕は、美しくて、温かくて、生々しい感情のスペクトラムに感嘆しきりだったよ」。ロナーガンは、創作上のキャラクターたちを、まるで観客が昔からずっと知っていた人々と同じように大切に思わせる、とムーアは言う。
「これは、人々の心にずっと残る映画だ」とマット・デイモン。「彼が生み出すキャラクターたちは、とても深く、豊かに描かれている。緻密で説得力があるんだ。多くの映画のキャラクターは鉛筆のスケッチのようなもの。でもケニーのキャラクターたちは、実際に生きているように感じられて共感できる。力ある役者と脚本、そしてケニーの演出によって、この映画は忘れられないものになった」
*1 クリス・ムーア・・・プロデューサー。これまで手がけた作品に『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)、『アメリカン・パイ』(99)などがある。
*2 ジョン・クラシンスキー・・・マサチューセッツ州ニュートン出身の俳優、プロデューサー。おもな出演作に、TVシリーズ「The Office」、映画『ホリデイ』(06/ナンシー・マイヤーズ監督)など。
*3 キンバリー・スチュワード・・・劇映画のプロデュースは本作が初。プロデュース作に、ドキュメンタリー映画「Through a Lens Darkly: Black Photographers and the Emergence