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オタール・
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『イオセリアーニに乾杯!』
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『群盗、第七章』<イオセリアーニに乾杯!
BITTERS END shopping gallary
『群盗、第七章』
Brigands : Chapitre Z

1996年/フランス=スイス=イタリア=ロシア=グルジア/カラー/122分 
*1996年ヴェネチア国際映画祭 審査員特別賞受賞

監督:オタール・イオセリアーニ
脚本:オタール・イオセリアーニ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー
美術:エマニュエル・ド・ショヴィニ、ジャン=ミシェル・シモネ、レナ・ジュコヴァ
音楽:ニコラ・ズラビシヴィリ
編集:オタール・イオセリアーニ
出演:アミラン・アミナラシヴィリ(王、サルタン、ヴァノ、浮浪者)、ダト・ゴジベダシヴィリ(騎士、秘密警察長官サンドロ、乞食)、ギオ・ジンツァーゼ(王の楽師、ピアニスト、バイオリン弾き)、ニノ・オルジョニキーゼ(王妃、テロリスト、武器商人の手下の妻)、ケティ・カパナーゼ(サルタンの第一妻、サンドロの妻、武器商人の秘書)、アレクシ・ジャケリ(時計屋、国家元首、マフィアの弟)、ニコ・カルツィヴァーゼ(馬丁、ピオネールの指導者、武器商人の手下)、ニコ・タリエラシヴィリ(秘密警察長官サンドロの息子ニコ)


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【解説】

オタール・イオセリアーニが祖国グルジアの歴史を荒唐無稽なおとぎばなしに仕立てた群像劇。ファンタジックに描かれる中世から、旧ソ連時代、内戦時代、そして現代のパリ……と時間軸や場所が交錯したり、一人の俳優が何役も演じわけたりと、一見複雑なストーリーに見えがちだが、そこはイオセリアーニ。戦争や破壊など、いつの時代も人間が繰り返してしまうばかばかしい行動や、人と人との結びつきのもろさを笑いとばすようなユーモアが全編に散りばめられている。横暴な権力者たちに屈せず、どんな時代でもどんな政府でも、それでも生きていく強さを持つ人々への、イオセリアーニ流の人間賛歌でもある。
中世のグルジアでは王だった男が現代のパリでは浮浪者、と輪廻転生のように一人のキャストがそれぞれの時代を演じわけているのも楽しい。ちなみに王、サルタン、ヴァノ、浮浪者と4役を演じた主演のアミラン・アミナラシヴィリは、この作品でダンケルク映画祭の最優秀男優賞を受賞した。


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【ストーリー】

現代のパリ。とある試写室に集う男たち。席に座ったとたん、男たちはタバコを吸い始める。スクリーンに映し出されたのは、豪邸に集い、半裸で酒を飲みゲームに興じる大人たちを少女が射殺するシーンだ。
中世のグルジア。馬にまたがった王(アミラン・アミナラシヴィリ)は、ある日森で羊飼いの美しい娘(ニノ・オルジョニキーゼ)を見初める。王はそのまま彼女を馬に乗せ王妃に迎えた。
内戦下のグルジア。あごひげの浮浪者(アミラン・アミナラシヴィリ)は酒瓶を抱えて通りに出る。街には装甲車が行き交い、建物の屋上には市民に向かって銃を構えた女性の狙撃手がいる。
中世。戦争が始まり、王は騎士(ダト・ゴジベダシヴィリ)らと戦地へ向かうことになった。出発前に王妃に貞操帯をつけさせるが、王が城を出たとたん、王妃は貞操帯の合鍵を窓から投げ落とし、それを階下にいる馬丁(ニコ・カルツィヴァーゼ)が受け取る。戦に勝ち、ある夜突然帰ってきた王は、熟睡中の王妃が貞操帯をつけていないことに愕然。彼女の浮気に気づいた王は、浮気相手を探し出し拷問にかけ、王妃も公開打ち首の刑にかけて殺してしまう。
革命前のグルジア。金持ちたちの財布をすりとる口ひげの男ヴァノ(アミラン・アミナラシヴィリ)が盗品を持ち込んだ古売屋(アレクシ・ジャケリ)は共産主義者のテロリストだった。古売屋とその仲間の女(ニノ・オルジョニキーゼ)に脅されてヴァノも仲間に入る。その後、共産主義革命が起き、古売屋は共和国のリーダーに、ヴァノは内務人民委員部長官となった。密告を受けたブルジョワ、オペラ歌手、科学者らが秘密警察によって次々と逮捕され、大学教授の高級アパートメントはヴァノ一家に押収される。秘密警察長官サンドロ(ダト・ゴジベダシヴィリ)は息子のニコ(ニコ・タリエラシヴィリ)を連れて秘密警察庁舎へ向かう。サンドロはニコを取り調べ室に連れて行き、拷問器具とその使い方を説明する。ピオネール(共産主義教育組織。10〜15歳の少年少女で構成されるソ連式ボーイスカウト)に属しているニコは秘密警察に通じている小学校教師に、「パパが新聞を読んで『みんなバカだ』と言っていた」と密告し、その結果、サンドロは暗殺される。
中世。森でサルタン(アミラン・アミナラシヴィリ)と妻らが談笑している。第一妻(ケティ・カパナーゼ)はサルタンの杯に毒を盛り、それを飲んだサルタンは倒れる。それを見て第一妻は「くたばれ、愚かな犬」と罵りの言葉を残す。一命をとりとめたサルタンが目を覚ますと、傍らには楽師(ギオ・ジンツァーゼ)と歌手(オタール・イオセリアーニ)がおり、群集の歓声が聞こえてくる。第一妻が吐いた捨てセリフをオウムが口真似したことから、サルタンを殺そうとしたのは第一妻だとばれ、彼女は鉄の檻に囚われてしまう。
内戦下のグルジア。あごひげの浮浪者が外にさまよい出ると街は砲撃されている。盗んだじゅうたんを売る浮浪者のもとにマフィアの青年(ニコ・カルツィヴァーゼ)がやってきて、ボスがそれを買い求める。マフィアの小男(アレクシ・ジャケリ)は妻(ニノ・オルジョニキーゼ)と口論したあと、男たちを率いて車で出かけ、駐車中の車に爆弾テロを行う。その後マフィアの小男は3台の戦車を密売する。戦車に便乗して飛行場へ行った浮浪者と青年は飛行機に乗る。
現代のパリ。高級車に乗った少女がマフィアの青年に連れられて改装中であるマフィアの隠れ家にやってくる。壁には自動小銃やライフルが飾られている。少女はグラスを耳にあてて隣室の様子を盗み聞きする。
駅をあごひげの浮浪者が歩いている。浮浪者仲間の一人(ギオ・チンツァーゼ)に声をかけられ着いていくと古い画廊にたどりつく。そこには自分とそっくりな中世の王の肖像画が飾られていた。買い求めようとするが1万フランもすると聞いて、二人はそのまま店を立ち去る。
マフィアの男(マニュ・ド・ショヴィニ)が女と共にマフィアの隠れ家に到着する。彼らは酒を飲み、半裸でゲームに興じる。(冒頭の試写室のシーンと同じ光景)そこに自動小銃を構えた少女が隣室から現れ、全員を撃ち殺すと、「人を大勢殺しました。父も叔母も」と自首の電話をする。
試写が終わった映写室から、男たちがあふれ出てくる。
街頭であごひげの浮浪者はタンバリンを叩き、バンドネオンの演奏に加わる。街中で、彼はマフィアの妻とすれ違い、「どこかで会った気がするんですが」と話しかけるが彼女は「言葉が分からないわ」と答え、立ち去ってしまう。
夕暮れ時のグルジア。大きな木の下で、二人の男が焚き火をしながら歌を歌っている。「さらばゼスタポニの町よ/私はここをあとにする/遠く離れた地へ/お前に別れを告げて/ああ僕のぶどう畑よ・・・」