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○美しい自然、そして一貫して選び続けているテーマ

 長編二作目である本作は、非常にドラマチックな秀作だ。 “ドキュ・ドラマ”と称される独自の手法で映画を撮り続けているジャリリには珍しく、劇的な出来事の積み重ねにより、物語は進行してゆく。だが、離れた両親を案じながら、慣れない森で過ごす少年の不安を、清冽に描き出す点など、現在も彼が一貫して選び続けているテーマと通じている。現代の虐げられた子供たちと、戦争により虐げられた子供たちとは、時代が異っても、守るべき存在として同一なのだ。
 また、現在のジャリリ作品と同様に、彼は本作においても、音や背景など、自然の設定にこだわりを見せている。舞台となっているのはイランの北部、カスピ海の近くである。森が多く、南部とは全く雰囲気が違う。その森の美しさをあますことなく、ジャリリは映しとった。雪の降る泉、木々の間を行く舟など、その風景の美しさは圧巻である。

○戦争終結への願い

 1980年9月、イラクのサダム・フセイン政権がイランへの侵攻に乗り出したことから、イラン・イラク戦争は始まった。この戦争は、イスラム革命が自国へ波及することを恐れた湾岸アラブ諸国がイラクを支援したことや、米軍がイラク側に有利に動いたことなどと併せて、イランの国際的孤立を招いた。88年8月、国連による停戦監視が始まり、長期にわたった戦争の幕が閉じた。
 最も辛い戦況であった85年に製作された本作には、戦争終結への願いが込められている。 国や民族によって人々を分けることは意味がない、とジャリリは言う。世界中の人間が一つの民族として、共生するべきだ、と考えているのである。

○一切の妥協を許さない監督、アボルファズル・ジャリリ

 本作のために、ジャリリはロケを行なう泉を探していた。大勢の人が様々なところへ案内したが、どれも彼の期待に添わなかった。そこで、彼は泉のセットを作ることにした。イメージにあった場所を選んで、村人を雇い、ショベルカーやクレーンを使用するほどの大作業を経て、ようやく泉が完成した。水草や藻をつけ、橋を渡し、泉の横には小さな小屋を建てた。完璧なセットができあがった。だが、村人たちが美しい泉の完成を喜んでいるのも束の間、主人公が夢で見たように、ジャリリはその小屋を爆破してしまった。「一切の妥協を許さない監督」と呼ばれている由縁のひとつである。
 現在でも、出演者との関係を築くためには打ち解け合うまで何ヶ月もかけ、イメージに合ったキャストが見つからなければ撮影に入らず、気に入ったロケ地を探すためには何ヶ月も旅をする。そのこだわりゆえに、イラン国内での上映が許されなくても、彼は妥協することなく、撮りたい映画を撮り続けているのである。

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