イントロダクション

変貌し続ける社会の片隅――
喜びも悲しみも分かち合い、時を重ねる夫婦30年の物語。

国有企業の工場で働くヤオジュンとリーユン夫婦は、中国の地方都市で幸せに暮らしていた。大切なひとり息子シンシンを失うまでは・・・・・・。乗り越えられない悲しみを抱えたふたりは、住み慣れた故郷を捨て、親しい友と別れ、見知らぬ町へと移り住む。やがて時は流れ――。改革開放後、“一人っ子政策”が進む1980年代、めざましい経済成長をとげた1990年代、そして2010年代。喜びと悲しみ、出会いと別れを繰り返し、それでも共に手をたずさえて生きていく夫婦の姿を、激動の中国を背景に映し出す。大きく変貌し続ける社会の片隅で懸命に生きる人びとを優しい眼差しで描き出した、壮大な叙事詩と呼ぶべき傑作が誕生した。

ベルリン国際映画祭最優秀男優賞&女優賞ダブル受賞の快挙! 中国第六世代の名匠ワン・シャオシュアイが織り成す、珠玉の人間ドラマ。

30年に及ぶ夫婦の絆を『薄氷の殺人』のワン・ジンチュンと、『黒衣の刺客』のヨン・メイが熱演。長年連れ添った夫婦の内面的な変化までをも繊細に演じ切り、「観終えたあと、彼らと長い時間を共に過ごしたかのような親密な気持ちになる。素晴らしい演技力!」(ガーディアン紙)と世界も絶賛。見事、本作でベルリン国際映画祭最優秀男優賞、最優秀女優賞をダブル受賞する快挙を成し遂げた。監督は中国第六世代を代表するワン・シャオシュアイ。本作で3度目となるベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞、名匠としての地位を確固たるものにした。また『冬の小鳥』『ポエトリー アグネスの詩』などで知られるキム・ヒョンソクが撮影を手がけ、壮大な中国の風景と、日常の美しい瞬間を見事に切り取っている。

変わることのない友情を歌う「蛍の光」

日本では卒業式の定番ソングとして親しまれている「蛍の光」。劇中、ノスタルジックな旋律に乗せて中国語歌詞で歌われるのは、“時が流れても変わらない友情や愛情”。時代に翻弄され、心許せる友との別れを経験しながら歳を重ねる主人公たちを、希望へ導くかのように優しく響き渡る。