コメント

いつしか観ている側のぼくらも映画の中にいるのだなと思った。
そして生きてることに乾杯したくなったんだ。

荒井良二(絵本作家)

こんなに世の中が不条理で人生が辛く思える時、
同じ世界が美しさも希望も含んでいることを
チャーミングに教えてくれるイオセリアーニ監督にただ感謝したい。

―山崎まどか(コラムニスト)

生きていることがナンセンスに思えて、
なぜか幸福な気分になりました。

きたろう(俳優)

所有と自由をめぐるコントで、映画がダンスする!
人間社会は矛盾に満ちてろくでもないが、生きるくらいには値するよ、
生きていれば友と酒が飲めるし音楽も聴けるじゃないか。
解放の魔法を、おじいちゃんと野良犬が教えてくれる。

町山広美(放送作家)

生きるとはしあわせを求める営みである。
さて、僕もこの映画の登場人物の一人である。
どの場面に現れるのかお探しください。

松浦弥太郎(エッセイスト)

いいことばかり起こらなくても、ぽっとハートがあったかくなる。
幸せは、じつは日常の片すみに転がっているということを
教えてくれたのは、ちょっとさえない登場人物たちでした。

KIKI(モデル)

いっぷう変わった人々の織りなすプチ出来事がやがて風合い豊かな織物に仕上がる。
まさに仏版『どですかでん』(黒澤映画最高異色作)ではないか!

やくみつる(漫画家)

滔々と流れる独特のテンポの中に
長屋物の落語に出てくるようなクスッと笑ってしまう笑い所を
散りばめた微笑ましい一作。

三遊亭小圓楽(落語家)

この国籍、年齢、性別を超えた「不良性」こそ、
ともすれば二十一世紀が忘れがちな歴史的美徳である。

蓮實重彦(映画評論家)

可笑しさ溢れる『皆さま、ごきげんよう』は、現代社会の寓話だ。
まさに、ジャック・タチやチャップリンのよう。

アーレリアン・フェレンツィ/テレラマ

オタール・イオセリアーニは現実に幻想を抱いてはいないが、自由を謳う歌い手となる。
『皆さま、ごきげんよう』は、友情、友愛、愛情が、魔法の力を持つのである。

ナタリー・シモン/ル・フィガロ

ローラーでパンケーキみたいにペシャンコにされたホームレスを、通行人が引き出して扉の隙間から中に差し入れる。
これは、映画作家オタール・イオセリアーニの『皆さま、ごきげんよう』のほんの一例。
バランス感覚に長けた監督の、悲劇的にして滑稽なオデッセイ。

エリック・コーン/インディワイヤー

イオセリアーニが年を取るにつれ、彼の映画は若返り、軽みを増し、陽気なシュールレアリスムに近づく。
いつだって彼の映画の中では、物語、人物、時代が混じり合うのだが、
彼の目指すところはただひとつ、世界のとてつもない残酷さを耐えられるものにすること、だ。例え季節が冬であっても、歌を歌おうじゃないか。それがこの軽快で可笑しな映画『皆さま、ごきげんよう』の教訓だ。

ピエール・ミュラ/テレラマ

洗練されたヨーロッパ的ファルス。苦もなく達成されたかのように見える巧みさで、イオセリアーニは現在とは違うオルタナティヴなリアリティを呼び出すのだが、そこは、凡庸な現代世界からの隠れ家となるのだ。

ニール・ヤング/ハリウッド・レポーター

詩的なファンタジー『皆さま、ごきげんよう』で、映画作家オタール・イオセリアーニは、自分たちを排除しようとする勢力にもかかわらず、友情と愛と夢でもって、混沌とする社会の中にとどまろうとする人々を描く。

マリー=ノエル・トランシャン/ル・フィガロ

ファンタジーであるイオセリアーニの『皆さま、ごきげんよう』は、それでも時代の刻印を受けている。軽さを装う表面の下に、社会の確かな観察が秘められているのだ。
ファンタジーとはこの場合、現実から目をそらすことではなく、静かに現実を見つめる目なのである。

シディ・サコ/トランスフュージ

これは生まれ変わりの、輪廻転生の物語だろうか。
いや、そうではない。イオセリアーニは、ノンシャランでバーレスク風な調子でアイロニーたっぷりに、ありとあらゆる苦しみ、人間科学、オカルトを驚くほど甘美なスペクタクルにしてしまう。彼はヨーロッパでも稀に見る冷静沈着、真面目な顔で冗談を言う人物なのだ。この映画は楽しく、人の心を解き放ち、民主主義的であると同時に(広角の画面は民主主義だ)、貴族的(ダンディズム)でもある。
身振り(たいていの場合、愛の身振り)は言葉(たいていの場合、ジャック・タチのように聞き取れない)よりも重要だ。要するにイオセリアーニの映画は相変わらずなのだが、愉しさと同じ分だけメランコリーが感じられる。
彼のノンシャランは、彼の真面目さの裏返しなのだ。

ジャン゠バチスト・モラン/レザンロック

オタール・イオセリアーニは、新作『皆さま、ごきげんよう』と共に、社会の周辺に生きる不屈の闘士たち(ここではリュファス、ピエール・エテックス、マチュー・アマルリックが演じる)が出没する界隈に帰ってきた。革命期のパリから、戦争の惨禍生々しいコーカサスを経て、現代のパリへ。80歳になんなんとする作者は、弱々しいヒーローたちが敵を打ち破ることができるなどと幻想を抱いてはいない。しかし少なくとも、イオセリアーニの分身たる彼らは、嘲りと不合理、そして優美さという武器で、とことんまで戦うのだ。

トマ・ソテェイネル/ル・モンド

※敬称略・順不同