出演者

富司純子絹子

1945年12月1日生まれ、和歌山県出身。高校3年の時にマキノ雅弘監督にスカウトされ、同監督の『八州遊侠伝 男の盃』(63)で女優デビュー。1968年の『緋牡丹博徒』で初主演を務めると大人気となり、「緋牡丹博徒」シリーズ、「日本女侠伝」シリーズ、「女渡世人」シリーズで東映のスター女優として一世を風靡した。89年、久々に高倉健と共演した『あ・うん』での映画復帰を機に富司純子に改名。その後の主な出演作に『あ、春』(98/相米慎二監督)、『おもちゃ』(99/深作欣二監督/アジア太平洋国際映画祭最優秀助演女優賞ほか多数受賞)、『フラガール』(06/李相日監督/ブルーリボン賞助演女優賞ほか多数受賞)、『犬神家の一族』(06/市川崑監督)、『明日への遺言』(08/小泉堯史監督)、『舞妓はレディ』(14/周防正行監督)、『散り椿』(18/木村大作監督)など。2007年には紫綬褒章、2016年には旭日小綬章を受章。本作は実に14年ぶりの主演映画となる。

私の演じた絹子は夫との幸福な日々を過ごした幸せな女性で、純粋な可愛い人でした。その彼女をイメージし、上田監督の希望で衣装には私の着物を使いたいとのことで、撮影前に何十枚もの着物と帯を合わせ、その中から選んで頂きました。
撮影をした場所の、庭の藤棚の美しさ、家の歴史ある風格、庭から見える海、時間によって変わる景色など…すべてが今も印象に残っています。共演のシムさんは可愛いし、鈴木さんは本当の娘のように思えました。そして、上田監督は演技しやすいように雰囲気作りをして下さり、カットごとにとても良い気分にさせて下さいました。自然光の照明、カメラアングルの美しさなど映像の素晴らしさを楽しんで頂きたいです。

シム・ウンギョン

1994年5月31日生まれ、韓国・ソウル出身。『サニー 永遠の仲間たち』(11/カン・ヒョンチョル監督)では主人公・ナミの高校時代を演じて注目され、70歳の老女が20歳に若返るコメディ『怪しい彼女』(14/ファン・ドンヒョク監督)では百想芸術大賞映画部門最優秀主演女優賞はじめ数々の女優賞に輝いた。そのほか韓国での主な出演作にヨン・サンホ監督作『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)、「サイコキネシス -念力-」(18)など。日本でも『新聞記者』(19/藤井道人監督)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、毎日映画コンクール女優主演賞などを受賞、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』(19/箱田優子監督)でも高崎映画祭最優秀主演女優賞を受賞するなど、まさに飛躍の一年となった。また映画以外でも、堤真一らと共演した舞台「良い子はみんなご褒美がもらえる」(19/トム・ストッパード作)への出演など、今後ますます日本での活動が期待される。

先ず、富司さん、鈴木さん、チャンさんはじめ尊敬する役者の方々と共演が出来たこと、上田監督の初映画に参加できたことを本当に光栄に思っております。
脚本を読ませて頂いた時は、水彩画のようなイメージが浮かび、心が落ち着くのを感じました。とても淡白ながらも余白の中に深いイメージがたっぷり入っていると思いました。私の演じた渚は優しい人で、でもどこかでずっと自分探しをしているようでした。撮影しながら彼女が成長していくことを感じ、一緒に喜んだり悲しんだりしていました。
そして、富司さんとは一番長くご一緒して、私がまだ日本に慣れていないことを気にかけて頂いたりとても心強かったです。美しい時間を皆さんにも是非観ていただきたいです。

鈴木京香陶子

1968年5月31日生まれ、宮城県出身。1989年、森田芳光監督の映画『愛と平成の色男』で女優デビュー。91年にはNHK連続テレビ小説『君の名は』でヒロイン・真知子を演じ、一躍、国民的女優となる。以降、硬軟とりまぜた幅広い役柄をたおやかに演じきる貴重な演技派として、TV・映画・舞台に活躍を続けている。映画の主な出演作には、『ラヂオの時間』(98/三谷幸喜監督/日本アカデミー賞優秀主演女優賞ほか受賞)、『39 刑法第三十九条』(99/森田芳光監督/キネマ旬報賞主演女優賞ほか受賞)、『竜馬の妻とその夫と愛人』(02/市川準監督/日本アカデミー賞優秀主演女優賞ほか受賞)、『血と骨』(04/崔洋一監督/日本アカデミー賞最優秀主演女優賞ほか受賞)、『こおろぎ』(06/青山真治監督)、『沈まぬ太陽』(09/若松節朗監督)、『救いたい』(14/神山征二郎監督)、『おかあさんの木』(15/磯村一路監督)などがある。

これまで何度もご一緒させていただきました上田さんの、美しい絵、涼やかな映像が映画になるという事で、完成をとても楽しみにしていました。そして、家族と家を案じる心優しい女性の役で出演する事が出来たことをとても嬉しく思っています。
私にとって、海を眺める日本家屋で富司さんと母と娘として接した時間は、何にも代えがたい貴重で幸せなことでした。美しい佇まい、優しい声、丁寧な所作…日本女性として、女優として、憧れの方です。
また、亡き母の姿を求めて日本にやってきた切なく可憐な渚は、ウンギョンさんの姿にぴったりと重なって、渚のことが大好きな叔母の気持ちに自然になれました。

チャン・チェン黄(ファン)

1976年10月14日生まれ、台湾、台北市出身。91年、演技経験がほぼないままエドワード・ヤン監督に『牯嶺街少年殺人事件』の主演に抜擢され、鮮烈なデビューを飾る。その後、『カップルズ』(96/エドワード・ヤン監督)、『ブエノスアイレス』(97/ウォン・カーウァイ監督)に出演。兵役のために俳優業を一時休業したが、復帰後は全世界で大ヒットを記録した『グリーン・デスティニー』(00/アン・リー監督)で重要な役どころを演じたのを皮切りに、『百年恋歌』(05/ホウ・シャオシェン監督)、『呉清源 極みの棋譜』(06/ティエン・チュアンチュアン監督)、『ブレス』(07/キム・ギドク監督)、『レッド・クリフ Part I & PartⅡ』(08、09/ジョン・ウー監督)、『グランド・マスター』(13/ウォン・カーウァイ監督)、『黒衣の刺客』(15/ホウ・シャオシェン監督)など、アジアの巨匠たちからのオファーが引きも切らない。2014年にはオムニバス映画「三生」で監督デビューも果たした。

上田監督の脚本は詩的な美しさを潜め、読んでいるうちに自然と脳裏に優美な映像や光景が浮かびました。今回は日本語の脚本とセリフということもあり、特に言葉への理解と練習に努めました。 撮影前には監督と役柄について意見を交わし、撮影中も監督のスタイルを観察することで、この映画で構想されている世界観への理解を深めることができました。 共演した富司さんについては、撮影前に多くの出演作を鑑賞しました。 現場では、富司さんが座っているだけで役に注ぐありったけの感情やエネルギーが伝わってきました。ウンギョンさんは、非常に聡明かつ明敏な役者で、監督が投げかける課題を的確に解釈しています。彼女の芝居には驚かされました。

田辺誠一戸倉

1969年4月3日生まれ、東京都出身。87年、『MEN'S NON-NO』専属モデルに選ばれモデルデビュー。92年に深夜ドラマ「熱い胸騒ぎ」で俳優デビュー。98年には『BLUES HARP』(三池崇史監督)、『激しい季節』(君塚匠監督)など多くの主演作で注目を集め、日本映画プロフェッショナル大賞新人賞を受賞する。99年には初監督作『DOG-FOOD』がベルリン国際映画祭フォーラム部門に正式招待された。2002年には『ハッシュ!』(橋口亮輔監督)で報知映画賞最優秀主演男優賞などを受賞。以後も俳優として映画・TV・舞台と幅広く活躍している。

清水綋治幸三

1944年2月11日生まれ、京都府出身。俳優座養成所、文学座研究生を経て、66年に串田和美らと「劇団自由劇場」を旗揚げ。その後、佐藤信と「黒色テント68/71」の設立にも関わる。映像分野では、67年にTVドラマ「風」で組んだ実相寺昭雄監督の作品の常連俳優となり、映画『宵闇せまれば』(69)、『曼荼羅』(72)、『悪徳の栄え』(88) などで特異な個性が発揮された。時代劇の出演も多く、NHK大河ドラマの出演は12作品を数える。その他の主な映画出演作に『影武者』(80/黒澤明監督)、『暗室』(83/浦山桐郎監督)、『武蔵 -むさし-』(19/三上康雄監督)など。