教授とわたし、そして映画

STORY 考察(3)三角関係で得するのは誰?

「キスが上手ね。あなた本当に付き合ったことないの?」

<第一章 呪文を唱える日>ジングは30代の映画監督、しかしアート系の作風が影響してか映画を撮れない。いまは生活のために、大学の恩師ソン教授の口利きで映画学科で教えている。でも大学の面倒な人間関係が頭痛のタネ。そんなある日、ソン教授から飲み会に誘われ、飲み会までの時間をつぶしていると先輩と出会った。先輩は、ソン教授がカネをもらって別の講師を昇進させたと噂があるとジングに吹き込む。ジングは飲み会で酔った勢いでソン教授に絡んでしまうのだった。


<第二章 キング・オブ・キス>ジングが映画学科の学生だった頃、同じ学科のオッキに恋をした。オッキに付きまとうジング。最初は嫌がっていたオッキも、まんざらでもない様子。でも、オッキはソン教授と秘密の関係を持っていた。3人の三角関係を知るのはオッキひとりだけ。冬のある日、オッキの部屋の前で彼女を待って一晩過ごしたジングは、やっと部屋に入れてもらい、そのまま結ばれたのだった。


<第三章 大雪の後に>大雪の翌日、映画学科のソン教授 が講義のため教室に入ると、生徒は誰もいない。やがて、女子生徒オッキと男子生徒ジングがやって来る。教授が何か質問はあるかと ふたりに聞くと、ふたりは思いがけない質問をぶつけてきた。恋愛とは何か? 愛とは何か? ソン教授は真剣にその普遍的な質問に答えるのだった。


<第四章 オッキの映画>ふたりの男はオッキに翻弄されているだけなのか? 映画学科のオッキは若い男と年上男との、三角関係で得た経験をもとに、それぞれの男と年の瀬から正月にかけてアチャ山を訪れたデートを映画にして、自らの恋愛を検証し始める。


オッキという名の女をめぐる恋愛変奏曲。恋愛と映画にまつわるエピソードが4章に分かれて繰り返され、観客を煙に巻く。複雑な三角関係の結末はいかに? 人気俳優 イ・ソンギュンが、謎めいた女に翻弄される役柄を軽やかに演じ、笑いと共感を誘う。

第67回ヴェネチア国際映画祭 オリゾン部門クロージング作品「教授とわたし、そして映画」

2010年/韓国/カラー/80分

監督・脚本:ホン・サンス
撮影:パク・ホンヨル
編集:ハム・ソンウォン

イ・ソンギュン(「コーヒープリンス1号店」)
チョン・ユミ(『甘い人生』)
ムン・ソングン(『冬の小鳥』)

ホン・サンス監督のトレードマークといえる
距離を置いた視点は、
ぶっきらぼうに見えて抜け目が無く、
ロマンティックであると同時に
ひんやり冷たさを感じさせる

———ヴィレッジ・ヴォイス誌

『教授と私、そして映画』の魅惑は、
単にこれまで以上に自由で実験的な
作風にあるのではなく、
人間関係を見つめる静謐なまなざしにある

———カイエ・デュ・シネマ誌