イントロダクション

美しき伝説が消えゆく時、馬は放たれる――。
未来へ希望を託す、現代の寓話。

中央アジアの美しい国、キルギス。妻、幼い息子と3人で慎ましく暮らす男は、村人たちから“ケンタウロス”と呼ばれていた。そんな彼には誰にも打ち明けていない秘密があった――。
豊かな大地を馬で駆け、自然の恵みを受けてきたキルギスの民。遊牧民を祖先にもつ彼らの間には、馬と人間を結び付け、村人たちを団結させてきた伝説が息づいていた。しかし、時は流れ、暮らしは変わり、人々の記憶から伝説は消えようとしていた。そんな伝説をある理由から強く信じているケンタウロスは、人知れず行動にでるのだが…。
現代を生きる我々が手に入れ、そして失ってしまったものとは何なのか。『馬を放つ』は、純粋なひとりの男の姿を通して、未来へ向けて普遍的メッセージを投げかける。


カンヌ、ベルリン、ロカルノ、世界中が絶賛する
名匠アクタン・アリム・クバト監督最新作!

ロカルノ国際映画祭で準グランプリに輝いた長編デビュー作『あの娘と自転車に乗って』。監督作にして初主演を務め、カンヌ国際映画祭に出品された『明りを灯す人』など、世界がその才能を絶賛した名匠アクタン・アリム・クバト。『馬を放つ』では監督を務める一方、強い信念を秘めた寡黙な主人公ケンタウロスを熱演している。また本作では、国境を越え優秀なスタッフが集結!アカデミー賞®外国語映画賞受賞『ノー・マンズ・ランド』や、世界中で大ヒットを記録した『めぐり逢わせのお弁当』などを手掛けてきたチェドミール・コラールらがプロデューサーを務め、キルギスでの困難な映画製作を可能にした。本作は、第90回アカデミー賞®外国語映画賞キルギス代表となったほか、ベルリン国際映画祭パノラマ部門国際アートシネマ連盟賞など各国の映画祭で受賞を重ねている。


シルクロードの要所として栄えた地で映し出される、郷愁的な映像美

映画の舞台は、標高5000mを越える天山山脈のふもとに広がる山岳と草原の国キルギス。かつてシルクロードの一地点として栄えた。素朴であたたかみのある生活、伝統的な民族衣装…監督の強いこだわりにより自然光で撮影された映像は郷愁的で、観る者の心を揺さぶる。また、夜の闇に対比するように映し出される、優しい光に包まれた風景からは、未来へ向けられた監督の眼差しを感じさせる。