Bitters End
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『長江哀歌』
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監督インタビュー < 長江哀歌
BITTERS END

『長江哀歌』は、長江の古都、奉節で撮影されました。三峡ダムのプロジェクトによって、この地に巨大な変化がおこっています。何世代もここに住み続けてきた数限りない家族が移住を強いられています。二千年の歴史ある奉節は、打ち壊され、永遠に水に沈むのです。
私はカメラを携えて、この死刑宣告された街に入り、破壊と爆破を目撃しました。耳をつんざく騒音と舞いあがる埃の中で、私はしだいに悟っていきました。これほど絶望に満ちた場所でさえ、「生」はまばゆいまでに色鮮やかに花咲くのだ、と。

ジャ・ジャンクー
(オリジナル・プレスより)

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◆ジャ・ジャンクー監督インタビュー


なぜ三峡プロジェクトを映画の背景に選んだのですか?

私の見るところ、長江・三峡が最も大きな変化を迎えたのは2000年から2002年にかけてです。その頃、大規模な立ち退き策が進行中で、家は壊され、人は移住させられていました。当時、中国内外のメディアはこの地を訪れ、私たちに建設されつつあるダムや壊される家屋、移住する人々の映像を浴びせかけました。
しかし一度メディアが撤退すると、人も場所も忘れ去られたのです。誰も彼らのことなど気に掛けなくなった。私たちが長江・三峡へ行ったのはその頃のことです。人々がどう暮らしているのか、巨大ダムによってどのような影響を被ったのかに興味があったのです。
巨大プロジェクトの背後に私たちが見たものは、移住後に人々が直面した問題と困難でした。巨大ダムが建設される中、彼らは家を壊され、移住させられたわけですが、彼らの経験した変化は、中国全土の人々が経験した変化そのものであるように見えました。だからある意味で、三峡で起こった変化は、中国全体の変化を象徴しているのです。



撮影時、地元当局との間に問題は生じませんでしたか?

いいえ。というのも、2002年を過ぎてからはマスコミが去ってしまったので、もう騒動は治まったと当局は考えていたからです。彼らは、私たちに干渉しませんでした。といって援助もしてくれませんでしたが。私たちは、自由にどこにでも行くことが出来ました。
2002年当時は地元当局がかなり神経質になっていたのは知っています。その頃はマスコミ報道が活発で、プロジェクトの否定的な影響についても議論が盛んに行われていましたから。当局は困った立場にあり、事態を収拾しようと必死でした。しかし関心が過ぎ去った今や、三峡はとても静かです。
私たちが訪れたのは、メディアの関心がまさに収まろうとする頃でした。私たちはプロジェクトの現場に行き、ダムを撮影しましたが、映画の中でのプロジェクトそのものについての言及はわずかです。この映画の焦点は巨大ダム建設の背後で生じる出来事や変化に当てられています。プロジェクトは今や現実です。ですから、それがどのように人々の生活に影響を与えているかを描くほうが意味がある。三峡の人々の中にどれほどの生命力があるのか、彼等がいかに困難に直面し、決定を下し、さらにその過程で自由を見出し、尊厳を高めたのかを観客に見せたかったのです。






あらゆる中国的なイメージが長江・三峡には集中しているように見えます。絵画に描かれるような雲や雨、山といった伝統的中国もあれば、崩壊しつつある共産主義の中国もあり、興隆する自由主義の中国もあります。

たしかに、河、霧というのは中国の絵画で繰り返し現れる根本的要素です。ですから私はパン撮影を用いて、古典絵画の巻き軸のような動きを模して、空間を移動しているような感じを出しました。一方にはこうした自然美があり、他方にはある種の破壊の美がある。初めて建物の破壊を見たとき、本当に何かが終わるのだという印象を持ちましたが、それはまた、新しい時代の始まりでもあるのです。



一連の想像力に満ちた場面、シュールレアリスム的な場面が、映画に軽さやユーモアを与えています。特にあの建物が崩れ落ちる素晴らしい場面はどうやって生まれたのでしょう。

そうですね(笑)。たしかに私の映画ではこれまでなかったことです。しかしこれは中国では現実に起こることなのです。あの建物の崩壊は実際に私自身が体験したことなのです。ある日、中国東部のある都市で、友人と食事をしていたのですが、突然私たちの目の前で、巨大な建物が崩れ落ちたのです(笑)。本当にびっくりしました。その建物は半分完成しかかっていたのですが、造り終えるだけのお金がなかった。だから壊すことにしたそうです(笑)。
飛んでいくタワーは住民の移住を記念して市が建てたモニュメントですが、建設途中でお金がなくなり未完成のままです。三峡の美しい風景とあまりにそぐわないので、飛んでいって欲しいと思い、あのようなシーンを作りました。



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