1981年3月19日生まれ。群馬県出身。2002年「真夜中のパラノイアスター」でデビュー。これまで思春期の少年少女をモチーフに、独創的な作風で数々の作品を発表。「惡の華」がTVアニメ化、また「漂流ネットカフェ」、「ぼくは麻理のなか」がTVドラマ化、「スイートプールサイド」が2014年松居大悟監督により映画化されるなど、人気作品の映像化が続いている。自身の体験をもとに描いた「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」は、2011年12月~2012年10月太田出版WEB連載空間ぽこぽこに連載され、大きな感動と反響を呼んだ。その後、2012年に単行本化され、ロングセラー作品として幅広い読者に愛読されている。現在、「ハピネス」(別冊少年マガジン/講談社)「血の轍」(ビッグコミックスペリオール/小学館)を連載中。
comment
漫画以上に、まるで現実に起こったことをそのまま切り取ったような感触でした。志乃、加代、そして菊地の三人が、生々しく存在していると思いました。泥臭い青春映画でありながら、恥ずかしくなるほどキラキラしていて。そして、むせかえるような思春期のオーラに満ち溢れている。漫画を超えて、広く心に届く作品を作っていただいたことに感謝します。
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』での吃音
難発の吃音で、特に母音からの発音が苦手という志乃の設定は、原作者・押見修造の実体験をもとに描かれた。リアリティのある吃音描写、そして傷つきながらも自らと向き合い前に進もうとする志乃の姿は、当事者たちからも広く支持されている。
一方で、思春期の葛藤を描いた本作について、“誰にでも当てはまる物語になれば”という原作者の想いから、作品内では意図的に〈吃音〉という言葉は一切使われていない。その意志に、湯浅弘章監督も強く賛同。映画化にあたっても〈吃音〉という言葉は一切使用していない。
この漫画では、本編の中では「吃音」とか「どもり」という言葉を使いませんでした。
それは、ただの「吃音漫画」にしたくなかったからです。
とても個人的でありながら、誰にでも当てはまる物語になればいいな、と思って描きました。
――押見修造 (漫画 「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」〈太田出版〉あとがきより)