Bitters End
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『シリアの花嫁』
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監督の言葉 < シリアの花嫁
BITTERS END

<日本の観客の皆さまへ>

1994年のことですが、東京で行われたイスラエル映画祭で「CUP FINAL(カップ・ファイナル)」を上映するために日本を訪れました。
それは素晴らしい経験でした。映画も観客や報道関係の方々に温かく迎えて頂いたように思います。
レバノンでの戦争中に、パレスチナ人グループによって捕えられたひとりのイスラエル兵士の物語には、敵同士であっても共有される人間的な規範があり、日本人の心にマッチするものでした。

『シリアの花嫁』ではより良い仕事ができたと思います。多様な細部を含む複雑な家族の物語。
父と息子、家族と共同体の中で女性が果たす役割、さまざまな境界、宗教、伝統、近代、希望、愛、そして絶望。そうした言葉、そうした問題は全て、日本の皆さまにも共感して頂けますし、楽しんで頂けるものと信じています。

『シリアの花嫁』は、ローカルな物語です。舞台はイスラエルとシリアのはざまで、描かれるのは、シリアとイスラエルに分断されたアイデンティティと忠誠心を持つドゥルーズ派の人々です。
しかしトルストイがかつて述べたように、多くの場合、ローカルであればあるほど、人はいっそう普遍的になり、他者の原動力や、メッセージ、シンボルやメタファーを理解できるようになるのです。かといって、この映画がシンボルやメタファーにあふれているわけではありません。
これは単純でありながら、複雑な物語なのです。(映像的な意味でも、感情的な意味でも)全てを包み込むシネマスコープで撮られ、情熱と、そしてとりわけスクリーンに登場する全ての人物への愛をもって物語は語られています。愛とは古くさい言葉ですが、それでも何とか役に立つ言葉です。愛という言葉は、思うに、葛藤を、そして葛藤の中にある人々を描き、これほどの苦しみ、憎しみと死とを経験してきた地域の物語を描くには、カギとなる言葉です。
私の映画は、ペシミスティック(悲劇的)な世界を前にして、私たちみんなが持たねばならないある種のオプティミズム(楽観主義)を巡るものです。そのペシミスティックな世界の中で、花嫁は、結婚するために、世界の残酷さを克服する術を模索するのです。

日本の観客の皆さまに喜びと幸福をお祈り致します。そして、映画館を出た時、私の描いた物語について考えて下さることを心よりお願いし、お祈り致します。
これははるか遠い場所にいるある家族の物語であるばかりでなく、私たちみんなの物語なのです。
東京からテルアヴィヴ、大阪からニューヨークに至るまで、私たちはみな共通の目的を持っています。
それは、人間的であり続けること、人間的な細部に注意を払うこと、そしてとりわけ、仲間の声に耳を傾け、違った物の見方、考え方を理解しようと常に努めることなのです。         


監督 エラン・リクリス Eran Riklis